頂き物

□day by day
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day by day.



とある昼下がり。行き交う人の波をするすると通り抜けて向かう先はいつもの店。定着した集合場所。
「〜〜♪」
思わず小さく口ずさむ曲はつい最近借りた…もとい無理やり持ち主にコピーさせて覚えた流行りの1曲。
別段好きでもないが嫌いでもなく、耳に残るメロディーはどこで流れていてもおかしくない。
きっと同じ様な理由で聞いているだろう別の人物を頭に浮かべては足取りを早くする。


今日は随分久しぶりにした出掛ける約束の日で。
行き先が例えば頼まれついでの買い物だったりゲーセンだったり、どこにだってあるチェーン店でも…その内容は大した問題じゃない。
メンバーだって欲を言えばもっと少なくていいんだけど、そこはもう慣れっこというか。
とに かくとある人物と一緒の時間を‘又’過ごせる事が重要な訳で。
多少女々しかろうがそれが分かるのは自分だけだから気にもしないし元より恥ずかしくもない。


(だってどれだけ永かったか分からないし。)
浮かれるのもムリないムリないと、時間ピッタリに着くだろう自分をからかい半分で歩く。

13時ジャスト。時計を見なくたって分かる。
ガラス窓近くの影の中、こちらに気付いた黒髪の人物が軽く手を上げた。




「久しぶりだな弐猫。」
「んーそーだね、医者くんとは結構空いてたかも〜」

て言っても3週間位じゃない?と言えばそれもそうだな、と笑って返ってきた。
案の定10分前には来ていただろう医者くんの、少し離れた左隣に俺も並ぶ。< BR>組んだ両手をクッションに壁へと凭れかかれば少しだけ景色の距離が伸びた。


「で、やっぱり空くん達は遅刻なの?」
「ああ見ての通りな(笑) まぁアイツ等が先に来てたら逆に怖いんだが。」
「まぁね。何か企んでそうだし(笑)」

互いに見越してしかも承知の上で素直に来てるんだから、緑色した髪の人物に甘い!と言われるのも仕方ない。
尽きる事なく横切る人やら車の数を適当に数えて、ゆるく医者くんと話すのが今や定番となった。
割とこの時間も嫌いじゃないのは、きっと平和そのものの空間をぼぅっと見渡せるから。
目に焼き付いている白壁の屋敷とか暖簾の店だとか、そんなものは一切視界のどこにも残ってはいないけど。
絶えず聞こえる足音や煩い位の人の 声が懐かしさと共に耳に入っては抜けていく。
変わらず此処はこの国の中心地として栄え、沢山の人が集まりできている。


「…安心できるっていい事だよね」
「は?なんだいきなり;」
「別に、こっちの話ー」
それまでと繋がらない急な呟きに、医者くんがたまにお前訳分かんない事言うよな、と眉をしかめた。
そんな風に謎だって顔、昔もよくされてたなぁ。



そうこうしている間に多少の時間が経って。
( あ。)
向こうからお待ちかねの姿を発見する。いくら遠くて都会でも結構目立つその髪の色。
それに珍し過ぎる腕の中の喋る子狸。
セットとなればどうやっても間違える訳がない。




「遅いぞ!空、ぽち。約束の時間から大分経ってるじゃねーか。」
しきりに見ていた携帯をようやくしまうと、医者くんは2人をしかめ面で出迎えた。

「お母さまごめんなさいー」
「なんや開口一番に小言とか姑はほんまどこでも煩いのー」
「だから俺はオカンでも姑でもないっての!
ったく毎度毎度遅れてくるお前がいけないんだぞ空。これで何回目だと思ってるんだ?;
ぽちまでそういう風になったらどうする気だ…
第一外に待たせてる俺達に少しは悪気とかないのか?」
腕を組ん でため息交じりに問う医者くんはある意味正論でごもっとも。だけど。

「…だってさ、どうなの?空くん。」
チラッと視線を送って、聞くまでもない答えをあえて本人に求めてみた。

「悪いけどさらっさらナイわ〜(笑) 残念やったな。」
「だよねぇ、空くんてそういう奴だよね(笑)」
「オィイ!弐描もいいのかそれで!てゆーか約束する意味とか俺らの尊厳は!?」
「んなもん知るかーいっ」
「おまっ空!!;」

ギャーギャーさっそく喧嘩の様なじゃれ合いをし出す2人をしばし眺めるのも楽しみの一つ。
空くんが間に入ると途端に医者くんのツッコミも全開で、声の大きさとかテンションが一気に変わる。
ギアの切り替え分かりやすいなぁ相変わらず。イイ事だけどさ。

「まーまー俺達が気にしなきゃ良い訳だし。医者くんも自分が甘い所為もあるって分かってるでしょ。
それよりどっから行くの?」
「おっ俺は甘くなんてしてないからな!/// 念の為!」
「今日は俺、寄りたいトコあるんだよねー」
「そうなん?」 「うん」
「さらっと無視かお前ら!;」

ビシッと横からつっこみの手が伸びる。
ゴメン医者くん毎度わざとで。やっぱこのテンポに慣れちゃうと自然とね。
からかいたくなる空くんの気持ちがよく分かる。
とうの昔に覚えた感覚はそのままに、こっちの2人とも付き合えるのが面白い。
多少まだ警戒されてるのは仕方ないにしても。
何より、嬉しいのは。


キュルルル〜〜


「空さーんお腹空きましたー」
「「よしっまずはメシや(だね)!」」
「早いな!」

昔も今も決定権は空くん。イコールぽち、って所だよね。
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