いつわりびと◆空◆

□お前は真っ直ぐ進んでけ
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人には性格がある。
明るい奴、暗い奴、素直な奴、天邪鬼な奴・・・
それは人の個性として、その人の中に存在する。


―――お前は真っ直ぐ進んでけ―――


俺が空とぽちと一緒に旅をし始めてから1ヶ月経つ。
ぽちとは既に仲が良いし、空は食えない奴だが上手くやっているつもりだ。
まぁ、空(コイツ)が俺に嘘をついてからかわなければもっと上手くやる自信があるがな。



「もう日ィも落ちてしもたし、今日はココで寝るか?」


空が指差した先にあったのは、廃れた寺だった。
元は素晴らしかったであろう面影があちこちに残っているが、今は所々床が腐り抜けていたり蜘蛛の巣が張ってあったりしたいたが、いつもはそこら辺の林で野宿だったりするので今日はマシな方だ。

飯を食ったり、ぽちが床の穴に落ちてしまったり色々あったが俺らはようやく寝れる状況になった。
と、思ったんだけどなぁ。


「空さん、何か声がしますよ?」


耳をピロピロと動かしながら、ぽちが空に言った。


「声ェ?ワシには聞こえんけどのぉ」
「俺にも聞こえねぇな。ぽちの聞き間違いだったんじゃねぇのか?」
「いや、それはないわ。ぽちは動物やで、聴力はワシ等よりはるかに高い。ぽち、どっから声聞こえたん?」

「はい、向こうの林の方からです。」



ぽちはそう言いながら、寺の裏の林を指(?)指した。
こんな人里離れ廃れた寺があるだけの所、しかも夜。
そんな所で話し声があるとすれば山賊、最悪偽り人だ。


「薬馬行くで。ぽち、お前は場所分かったらすぐココに戻れ。わかったか?」
「おう。」
「わかったですー。」



場所は直ぐに見つかった。
見てみると子供、見たところ10歳だろう。と大人が3人。子供を囲うように立っていた。

耳を澄ませば会話が聞こえた。

『だから、僕は全部返しました!!』
『ハァ?何言ってんだよ小僧。』
『テメェの母親の薬代。まだ払い終わってねぇじゃねぇか。』



「空。」


小さく呼びかけると、ぽちを返し終わったらしく空が少し離れた場所から返事を返した。


「ただの揉め事とは違いそうやけど・・・」



空が何か言いかけたが、止めさせた。子供が気になったから。



『それは貴方達が・・・!!』
『ああ?俺たちが何なんだよ?』
『まぁ、払えないんじゃあテメェの体で稼ぐしかねぇよな?』

『・・・・・外道が・・・・』

『はぁ?!!テメェ喧嘩売ってんのか?!!』
『ちょっとは優しくしてやろうかと思ったが止めたぜ!
 おい、岩上!コイツ縛り上げて売り払おうぜ!!』


岩上と呼ばれた男が子供を縛りだした。

見てられねぇ、助けねぇと!!!

俺は子供に向かって走り出した。


「          !!!」

空が何かを俺に叫んでいたが聞こえない。
早く助けないと子供が!!!


「や、止めて下さい!!!」
「へっ、どうせこんな所。誰も助けてなんk・・・!!!」

バキィ!!!!

かなりいい音と共に俺の拳を男の頬に直撃させた。

「な、クソガキ・・・!!」
「こんな子供にそんな事して・・・自分が情けなくなんねぇのか?」
「っざけんな!!俺らはなぁ、そのガキに金貸してまだ全額返してもらってねぇんだよ!!」


子供は怯えた顔でこっちを見ていた、そして直ぐに顔を驚きの顔に変えて叫んだ。



「お兄さん後ろ!!」



直ぐ後ろに男が居た。

避けられねぇ・・・!!!

後頭部を殴られ急速に意識が遠のいた。
最後に見たのは子供の笑った顔。
最後に思ったのは空の事。


「うつ・・・ほ・・・・」


視界が完全に暗くなった。
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