季節の小説

□幻の美形の恐怖体験
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「今戻りました」
「ライッ!!」
生徒会室に入るなりカレンに抱き着かれた。
「ははっ…酷いじゃないか、カレン。置いていく事は無いだろう?」
カレンは弾かれたように顔を上げると、震え始める。
「カレン?…どうしたんだ、一体…」
「ライ…あなた一体どこにいたの!?」
僕が顔を上げると、ミレイさんを始め、皆が僕を見詰めていた。
「ライ…カレンは泣きながら、ここに来たのよ!?あなたとはぐれたって…」
「……………………は?」
僕にはミレイさんの言っている事が全く理解できなかった。
「うん、ライがいきなり消えちゃったって…」
「はい、もう…十分以上前から…ここにいました…」
「ライにも連絡しようとしたんだぜ?」
「だけど…何故か連絡がつかなかったんだよ」
「ライ、お前今までどこにいたんだ?」
口々に伝えられる事実を僕は理解出来ない。
「ま、待ってくれ…僕はカレンと一緒に今まで肝試しを…」
そこで僕は思い出した。
先程の…教室でカレンが呟いた言葉を。
カレンは確かにこう言ったのだ。
『これだからイレブンの文化は…』と……。
カレンは僕と二人の時、『イレブン』なんて言葉は絶対に使わない。
事実数分前は『日本人』という言葉を使っていた。
更にカレンの一人称もおかしかった。
カレンは自分を『あたし』とは…呼ばない。

その事実が更に僕を追い詰める。
「カ、カレン…カードは…?」
「あるわよ…ここに…」
そう言ってカレンは赤いカードを取り出した。
(じゃあ…僕がさっきまで一緒にいたのは…ダレダッタンダ?)
「ッ!!」
「ラ、ライッ!!」
僕は生徒会室を飛び出した。
(嘘だ、嘘だ、嘘だっ!!き、きっと皆が僕を騙してるんだ!)
僕は教室まで戻ると、震える手でビデオカメラを取る。
(こ、これを見せれば言い訳出来ない…!僕とカレンが映ってるこれがあれば…)
僕は確認の為にビデオカメラを再生する。
ミレイさんとニーナ、スザクとリヴァル、ルルーシュとシャーリー、次々と生徒会メンバーが映し出され、とうとう僕とカレンの…
「嘘だ…嘘だぁぁぁぁっ!!」
そこに映っていたのは…独り顔を真っ赤にしている僕の姿だった……。
(き、きっとルルーシュあたりが細工したんだ!そうに決まってる!!)
僕はそれでも認める事が出来ず、カードがあるはずの教室内に入っていく。
「カード、カードはたしかここに…」
僕は机の上にカードを見つけ、ホッと一息ついた。
「ははっ…全く、たちの悪い冗談だったよ…でも、詰めが甘かったな」
僕はカードに手を伸ばした。
ピチャッ…
「……………………えっ?」
何故か液体を触った音がして僕は手を引っ込める。
指には赤い液体…鉄の独特の臭いがするこれは…
「血…?」
ドサッ…
僕はその場に座り込んでしまう。
足が震えて立てないのだ。
「はっ…ははっ…嘘だ、あり得ない…」
認めなければいけない、でも認めたくない。
理性と感情が相反する。
と、その時…後ろに誰かの立つ気配がした。
誰でもいい、助けて欲しかった。
そんな想いを込めて僕は振り返った。
「…………ッ!!」
そこにいたのは……カレンの形をしたナニかだった。
「あ、ああ…アアアッ!!」
ソレは笑いながら近付いてくる。
『イッタデショウ…?ヒトリニシナイデッテ…』
その言葉を聞いた瞬間、僕の意識が遠のいていく。
意識が暗闇に包まれる寸前、僕の耳にはソレの狂ったような笑い声が聴こえてきた……。


―その後、僕は皆に発見されるまで、気絶していたらしい。
だから…その日から僕の嫌いなものに、『夜の学園』が追加されたのも…しょうがないと思う。
ただ1つだけ言えるのは…『もう二度と肝試しはしたくない』
それだけである……。


終わり

→双璧日記
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