長編 蒼と紅の軌跡

□TURN 15 魔王と魔女
2ページ/6ページ

ライがL.L.と話していたその頃、ルルーシュはL.L.の予測通りC.C.の願いが死ぬことだと聞かされていた。

「…お前は死ぬために俺と契約したのか?」
「そうだ」
「死ぬために生きてきたというのか…今に至るまで、ずっと…」

ルルーシュの言葉にC.C.は一瞬、本当にほんの一瞬だけ瞳を揺らしたが…すぐにそれを打ち消し頷く。

「…そうだ、この世の摂理はそこにある。限りあるもの、それを命と呼ぶ」
「…生きているから命のはずじゃないのか!死ぬだけの人生など…!」
「同じことだよ。死があるから人は生を自覚できる…死なない積み重ねを過ごしてきた私の生は人生とは言わない。ただの経験だ」
「C.C.、お前は…!」

ルルーシュが何を言おうとも再びC.C.の瞳が揺れることはない。彼女は決意していた、ここで自らの生を終わらせる代わりに…

「ルルーシュ…私を殺せ。そうすればお前はシャルルと同等の戦う力を得る」

ルルーシュに…さらなる力を与えることを。

「なんだとっ…!?」
「お前には生きる理由があるのだろう?ここで朽ちればナナリーを助ける事など出来なくなる、ライやカレンとの誓いも破るつもりか?」
「…………」

C.C.の言葉にルルーシュは俯く、彼女はそれを彼が優しく甘いがゆえに躊躇っているのだと判断して言葉を紡いでいく。

「お前は魔王になると言った、ならば今こそそうなるチャンスだ。大丈夫だ…今さら私が居なくなったところでお前を支えてくれる者は数多く…」
「…………な」

…静かな声だった。それなのにその声はC.C.の鼓膜を揺らし、彼女の口を閉ざす。顔を上げたルルーシュの瞳には…激しい怒りが浮かんでいた。

「…ふざけるな…この大嘘つきがっ!!!」
「何を…私が嘘つき…?」
「違うとは言わせない…そんな泣きそうな顔をしているお前にはなっ!!」

C.C.は気付いていなかったが…彼女は話している間、ずっと泣きそうな顔をしていて。ルルーシュは気付いたのだ、C.C.は確かに生きたいと思っていた時期がある、そして…それは今も続いているのだと。

「C.C.、教えろ!お前の本当の願いは……うわああああっ!?」
「ルルーシュッ!?」

ルルーシュが最後まで喋る前に目の前から消え、咄嗟に手を伸ばしたC.C.の腕は今まで黙って二人のやり取りを見ていたシャルルに掴まれていた。

「シャルル、お前…!」
「これ以上のお喋りは無駄…これよりお前の願いを叶えよう」
「っ…!!(ルルーシュ…!)」


tttt


「ライ、急げ!このままではこの世界の消滅に飲み込まれるぞ!」
「L.L.、1つだけ教えてくれ。君がいた世界ではC.C.はどうなったんだ?」
「C.C.は助かった…ただし全ての記憶を失って」
「記憶を…!?」

頷くL.L.の顔はとても苦々しく、ライはこのままではこちらの世界でもそうなってしまうのだと察し、L.L.が作り出した道へと走っていく。

「L.L.、君も来い!話はまだ終わって…」
「私は…この世界の崩壊を抑えなければならない…安心しろ、お前が行ったら私もすぐに脱出する」
「なら、ここを脱出したら…全てを聞かせてくれ、ゼロレクイエムとかいう計画の内容や君が歩んできた道を…」
「あぁ、また後で会おう…ライ。それと…ルルーシュ達に私の正体や今話したことは黙っていろ」
「混乱させないために、か。わかった、それじゃあ僕は行く、先に脱出していてくれ!」

ライはルルーシュ達を助けるべくCの世界へと向かっていく。それを確認したL.L.が腕を一振りすると…歪んでいた世界は一瞬で元に戻った。

「…すまない、ライ…私は嘘をついた」

そう…世界を歪ませたのはL.L.自身。そして彼はその気になればこの世界のコード保持者、C.C.などと変わらない力…いや、とある事情から彼はそれより強い力すら行使できる。
だがL.L.はどうしてもライにこれ以上、自身が歩んできた道を話す事が出来なかった。だから話を打ち切るため世界を歪ませ、C.C.の願いを教える事でライの危機感を煽り、嘘をついてまで彼だけをCの世界へと向かわせたのである。

「私は…やはりお前にこれからの事を話すわけにはいかない…既にこの世界は私がいた世界とは全然違う…下手に話せば全てが狂いかねない…そうなれば…またあの悪夢が…」

そう言って頭を抱え何かに怯えたように身体を震わせるL.L.からはルルーシュだった頃の自信も気高さもうかがえない。彼は思い出す、あの地獄のような光景を…最悪の結末を迎えた自分がいた世界を。

「私は、俺は…もう嫌なんだ…ナナリーもスザクもみんな死んでしまったあんな世界…俺がこの手で…C.C.を殺してしまったあんな…世界…」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ