季節の小説

□幻の美形の恐怖体験
1ページ/6ページ

「ね、ねぇ…ライ、本当に離さないでよ…?」

ギュッとカレンが僕の制服の袖口を掴む。

「大丈夫だよ、絶対に離さないから」

そう言うとカレンは安心したように微笑んだ。

「うん…信じてるから」

そんな仕草に内心『ああ…可愛いなぁ』なんて思いながら僕達は暗闇を歩いて行く。今僕達は夜のアッシュフォード学園にいた。


『幻の美形の恐怖体験』


―数日前、生徒会室―


全てはみんなで生徒会活動をしているときの事、窓から空をぼーっと眺めていたミレイさんの一言から始まった。

「暇ねぇ〜…なんか面白いことないかしら?」
「会長…仕事が残っているこの状況を暇と表現するのはおかしいでしょう」
「あら、それはサボってたルルーシュだけじゃない。他の皆はもう片付いてるわよ?」
「うっ…」

そう、今生徒会で仕事が残っているのは副会長で頭脳労働担当のため任される仕事が多いのに、よくサボるルルーシュだけで。
騎士団との二重生活を送っている僕とカレンも仕事は溜まるのだが、カレンは病弱設定のために仕事がそもそも少ないし、その仕事も僕が学園に行ったときまとめて片付けて彼女に負担を掛けないようにしていた。
というわけで今は他のメンバーが雑談をする中、ルルーシュ1人が書類を片付けている。

「ルルーシュ、やはり僕も手伝おうか?」
「そうしてくれると助「ダメだよライ!ルルを甘やかしたら!」シャーリー!?」

さすがに不憫になってきた僕は手伝いを申し出たのだが、シャーリーに一刀両断されてしまった。まさかシャーリーが反対するとは思ってなかったのだろう、ルルーシュは驚きを顕にしている。

「何故だ!?カレンはいいのに何故俺はダメなんだ!?」
「カレンは病弱なんだし、しょうがないでしょ。ルルーシュはただのサボりなんだし自業自得よ」
「ごめん、ルルーシュ。僕にはフォロー出来ないよ。やっぱりもう少し真面目に学園に来た方がいいと思うよ」
「くっ!スザクお前まで…!そもそも前提が間違っているんだ!カレンはただの猫かぶ…ぐおあっ!?」

ルルーシュが余計なことを言おうとしたので、僕はテーブルの下で足を踏みつけておいた。

「おいおい、どうした!?ルルーシュ!」
「何でもないよ、リヴァル(にっこり)」
「いや、なんでライが答えて…そ、そうだよな!何でもないよな!」

机に突っ伏して悶絶するルルーシュに、リヴァルが驚くが僕が代わりに答えたら納得してくれたらしい…が、なぜか汗をダラダラとかいている。どうしたのかと僕がリヴァルに聞こうとするとそれを遮るようにルルーシュが涙目で僕を睨んできた。

「ライ…(何をするんだいきなり!足が砕けるかと思ったぞ!)」
「なんだい、ルルーシュ?(君が余計なことを言おうとするからだろう?今度カレンの不利益になるようなことを言おうとしたら…………砕くよ?)」

目で会話をしながら僕は再びルルーシュの足の上に自分の足を乗せる。

「っ…な、何でもない!」
「そうか…じゃあ仕事頑張ってくれ(にっこり)」
「なっ!?手伝ってくれるんじゃなかったのか!?」
「何言ってるのよルルーシュ。ライはただでさえ多く仕事をこなしてるのよ。休ませてあげなきゃダメじゃない(サボりのあんたの尻拭いをどうしてライがやらなきゃいけないのよ!)」

カレンの言葉と言外のプレッシャーにルルーシュは完全に押し黙ってしまった。しかしその目を見るとどうやらまたろくでもない事を考えているらしい。

「…………(おのれ、カレンッ!俺がどれだけ苦労して黒の騎士団を運営していると思っているんだ!カレンには少しお灸を据えるべきだな。何か無いか?カレンの苦手なものとか…)」
「…………」

ダンッ!ダンダンッ!

「ぐおあああああっ!!?」

やはりまだ懲りてない様なのでルルーシュの足を更に力を込めて何回も踏み抜いた。ルルーシュは足を抱えて悶絶している。

「ぐうううっ…!ライ…………!」
「うるさいぞ、ルルーシュ(にっこり)」

「それでスザク君、こういう時に何か面白いイベントってないかしら?」
「え、ええと…そうですね…」

どうやら皆は僕とルルーシュを黙殺する事にしたらしい。スザクを囲んで何かを話している。

「とりあえずルルーシュ、さっさと仕事を片付けよう」
「あ、ああ…そうだな…」

いい加減、埒が空かないのでルルーシュからいくつかの書類を奪い、処理することにした。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ