季節の小説

□モスキート・ウォー〜アッシュフォード学園死闘の記録〜
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夏の暑い日…アッシュフォード学園生徒会は一匹の虫に翻弄されることになる…


『モスキート・ウォー〜アッシュフォード学園死闘の記録〜』



「すいません、遅くなり「危ない!ライ、避けて!」っ!?」

生徒会室に入った瞬間に聞こえてきた声に咄嗟にライは身体を沈める。その上を風切り音と共に何かが通過した。

「…何の真似だ?スザク」

ライは襲ってきた張本人であるスザクを睨み付ける。彼はなぜかハエ叩きを持っていた。

「ご、ごめん!ライッ!怪我とかしてない?」
「怪我はしてない…それより質問に答えてくれ…返答次第では僕も容赦しない…」

ライの目はだんだんと険しくなっていく。それと同時に生徒会室は夏なのに冷たい空気に包まれた。

「ちょっ!?落ち着いてライ!これは蚊を退治しようとしただけなんだ!」
「そうよ、ライ!だから落ち着いて!」
「カレン…わかった、君がそう言うのなら。それでスザク、いったい何があったんだ?」

ライはカレンの言葉に雰囲気を和らげるとドアを閉めてスザクに問いかける。スザクはカレンとのあまりの扱いの違いに泣きそうになりながらもライがいない間の出来事を語りだした。


††††


それは久々に生徒会メンバーがライ以外の全員揃って仕事をしていた時のこと。生徒会室では一匹の虫が猛威を奮っていた。


「あー!知らない間に蚊に刺されてる―!」
「嘘っ!?蚊がいんの!?勘弁してくれよ〜!」
「もうそんな季節なのね〜、ルルーシュ〜!殺虫剤と蚊取り線香〜」
「はいはい…人使いが荒いんだから…」

シャーリーに掻かない方がいいと忠告しながらルルーシュは戸棚を漁るが、その表情は苦笑からだんだんと険しいものになっていく。

「どうしたんだい、ルルーシュ?」
「…………ない」
「えっ?ルルーシュ、今なんて…?」

ルルーシュは振り返ると言った、思いっきり不機嫌な色を表情に乗せて。

「殺虫剤も蚊取り線香も…………切らしている」
「えーーーーーーーっ!?」


††††


「…というわけなんだ」
「……たかが蚊一匹に騒ぎすぎじゃないか?」

スザクの話を聞き終わったライの感想は一言。なんというかあまりにも身も蓋もない。

「何言ってるの!ライは蚊に刺されたことないの!?」
「…ないな」
「じゃあわからないわね〜、蚊に刺されるともうそれは最悪なのよ」
「最悪…ですか?」

ミレイの一言にライが反応する。それはそうだ、大したことないと思っていた蚊が最悪だと言うのだから。

「そうよ〜…場合によっては死んじゃうかも…」
「ヒソヒソ…(会長、いくらなんでも誇張しすぎですよー!)」
「ヒソヒソ…(これくらい言えばライだって蚊の退治に本腰を入れるでしょ)」

ヒソヒソと話すミレイとシャーリーは気付かなかった。死ぬかもしれないと聞いた瞬間、ライが肩を震わせだした事に。

「死…ぬ…?」
「そうよ〜、このままじゃ皆死んじゃうかも…「ミレイさん!」…へっ?」

ガシッと肩を掴まれたミレイはそこでようやくライの瞳が潤み身体が震えている事に気付いた。

「えーっと…ライ?」
「すいません!僕は、僕は蚊を甘く見ていました…!」
「あのねライ…これは冗談…「シャーリー!」ふぇ!?」

シャーリーはライに抱き上げられていた。所謂、お姫様抱っこという奴だ。

「ラ、ラララ、ライ!?ダメだよ!君にはカレンが、私にはルルがぁ!」
「シャーリー、君は刺されているんだろう!?いいから安静にしてるんだ!」

シャーリーをソファーに寝かせると、ライはリヴァルとニーナに指示を出す。

「リヴァル!君はバイクで今すぐ殺虫剤と蚊取り線香を買ってきてくれ!」
「えっ!?あ、ああ!わかった!」
「ニーナ!君はリヴァルが間に合わなかった時の為に殺虫剤を作ってくれ!君なら出来るだろう!?」
「は、はい!やってみます!」

リヴァルとニーナが生徒会室を出ていくのを確認したライは次々と生徒会室の窓を閉めきっていく。そして今度は呆然としているルルーシュに詰め寄った。

「ルルーシュッ!君はナナリーの所に行け!ナナリーを守るんだ!」
「ライ、落ち着「早くしろ!ナナリーが危険な目に遇ってもいいのか!?」…わかった」

ライが止められないと悟ったルルーシュは生徒会室から出ていく。

「スザクッ!君は僕と一緒に蚊を退治してくれ!」
「うん!わかった!任せて!」

天然なスザクはあっという間にライに乗せられる。彼もライの反応を見ている内に蚊がとんでもない生き物だと認識してしまっていた。

「スザク…すまないがカレンと話してきて構わないだろうか?」
「うん、いいよ。行ってきて」
「すまない」

ライはカレンの下へ向かう、彼女だけは守りきると心に誓いながら。
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