季節の小説

□双璧湯けむり大騒動!
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神様というのは時に運命の悪戯を仕掛けるものである。

「福引きか…とりあえずやってみるか…」

だからきっと…これもその一つなのだろう。

「大当たり〜!ペアの温泉宿泊券です!」
「温泉か…特区も今は落ち着いてるし…行ってみるか」

これはそんな運命の悪戯に巻き込まれた一組の恋人たちのお話である。


『双璧湯けむり大騒動!』


―黒の騎士団アジト―

「ねぇ、ライ。どうしたのよ、こんなところに呼び出して」

アジトでも人がいない倉庫の中。カレンがライに呼び出され、連れてこられたのがここだった。

「ん…ちょっとな…」

ライの返事は要領を得ない。しきりに辺りを見回して人がいないか確かめているようだ。

「ちょっとって…(だから何なのよ…こんな人の来ないところに…あれ?人の来ないところで二人きり…まさか…)」

カレンはこの状況にある可能性を見いだし、その考えを頭の中で想像してみる…


††††


『カレン…僕…』

周りに誰もいないことを確認したライはカレンを強く抱き締めてきた。その普段とは違う熱のこもった声にカレンもライが何を望んでいるか気付いてしまう。

『ま、待って!そんないきなり…』
『いきなりなんかじゃない…僕はずっと…』
『ラ、ライだって男の子だから、そういう事に興味があるのもわかるけど…』
『違う。僕はただ君と…』

ライの真剣な目に、囁かれる甘い声にカレンの理性もぐらぐら揺れ動く。初めてがこんな薄暗い倉庫だなんて嫌なのにだんだんそれもどうでもよくなってきていた。

『そ、そんな目で見ないで…拒めなくなっちゃう』
『カレン…僕は真剣なんだ』
『ラ、ライッ…私は』
『君が…欲しい』

決定的な一言を口にするとライはカレンの服に手をかけ…


††††

「………カレン?」
「ダ、ダメだよ…わ、私たちまだキスだって数回しか…それに初めてはやっぱりベッドの上で…」

カレンは心の中で繰り広げられている推理…いや、想像…いや、妄想を全部口に出していた。ライにはよく聞こえていなかったのが唯一の幸いである。

「カレン…?(…いきなりどうしたって言うんだ?…いや、待てよ…こんな状態になる人間を僕は知っている気がする…)」

ライは友人の中から一人の少女の顔が浮かび、ため息をついた。

「(ああ…シャーリーだ。今のカレンはルルーシュで何かを考えてるシャーリーと同じだ…ってちょっと待て!?つまりカレンは今僕でとんでもない事を考えてるんじゃ…!?)カレン!こっちに戻ってきてくれ!」

ライは何とかカレンを引き戻そうとするが、彼女の暴走は止まらない。むしろライに触れられたせいでカレンの想像は彼女の中で確信へと変わっていた。

「やっぱり…そうなんだ…わかった、良いよ…ライが望むなら私…でもその前に…んっ…」

唐突にカレンにキスされるライ。いきなりそんなことをされたライが混乱していると、さらにカレンは服のボタンを外し始めた。

「んんっ…ぷはっ…ちょっ!?カレン止め…なぜ服を脱ぎだすっ!?頼むから待ってくれ…!それ以上されたら理性が…だから戻ってきてくれぇっ!!」


††††


「はぁ…はぁ…君、最近シャーリーに似てきたんじゃないか?」
「し、失礼ね!元はと言えばライがいけないんじゃない!」

何とか鋼の理性でカレンと自分を止める事に成功したライは、息を整えると本題に入る。カレンは自分の勘違いが恥ずかしかったのかまともにライを見ていないのだが。

「とにかく僕の話を聞いてくれ」
「う、うん…」

ライは少しだけ緊張したように、話を切り出した。
「カレン、今度の連休に予定はあるか?」
「えっ?特には無いけど…(もしかしてこれって…デートに誘ってくれるの!?)」
「そうか…よかった」

カレンの言葉にライは安心した様子で微笑む。その様子からカレンは今度の想像は間違っていないのだと悟った。

(ライと…デート…えへへ…)

カレンが期待に胸を躍らせていると、ライはポケットから二枚のチケットを取り出す。

「じゃあ…温泉旅行にでも行かないか?」
「……………………へっ?」

カレンにはライの言ったことが理解できなかった。いや、正確に言えば理解した瞬間に思考が停止したのだ。

「いや、だから…温泉旅行にでも行かないか?一泊二日で」

念を押すようなライの言葉にカレンの思考が解凍されていく。

「えぇ!?ちょっ!?」

カレンはパニック状態に陥った。まぁ、恋人に泊まり掛けの旅行に誘われたのだから無理はない。

(お、温泉…しかも泊まり掛け!?じ、じゃあもしかして…)

そしてカレンの思考はまた想像の海へと沈んでいく…


††††


『はあっ…いいお湯…』

カレンが温泉に浸かっているとガタンッと物音がした。

『誰っ!?』
『すまない、僕だ』

覗きかと警戒したカレンの目の前に現れたのは湯煙で姿はよく見えないが間違いなくライ。

『えっ、ラ、ライッ!?ちょっと何で!?』
『いや、君ともっと親しくなりたくて…こういうのを『裸の付き合い』と言うんだろう?』
『は、はだ、裸の付き…!』

2人での温泉旅行…当然カレンもそうなるかもしれないとは思っていたがさすがにライがここまで大胆だとは思っていなかった。

『んっ?カレン、何でバスタオルを巻いてるんだ。それでは裸の付き合いにならない…取ってくれ』
『へっ…!?いや、待って!?じゃあライ…あなたまさか…!』

最初はタオルを取ってくれと言う言葉に驚いたカレン。しかし言葉を考えれば今湯煙の向こうにいるライは…

『ああ、なるほど…僕に取ってほしいというわけか…』
『ふえぇ!?』
『安心してくれ…乱暴にはしないから』

ライがそう言った直後湯煙は晴れ、そこには一糸纏わぬ姿をさらしたライが…


††††


「ラ、ライ…強引だよ…で、でもライのためなら私…」
「だからそれは止めろっ!!…大体君の中で僕はどんな男なんだ!?」

再びトリップしたカレンを引き戻しにかかるライ。結局カレンの承諾を得たのはその数時間後だった…
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