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□写真と薬と猫耳と
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『写真と薬と猫耳と』
その日アジトのラウンジでは旧扇グループの1人である井上があるものを見ていた。
「んっ?何を見てるんですか井上さん…って何です、僕を見て笑って…」
そこに月下の整備を終えたライがやって来たのだが、彼がラウンジに入ったその瞬間井上は彼を見てニヤニヤ笑いだす。
「ねぇねぇ〜、これってライよね〜…?」
「えっ?……ーーーーっ!?」
笑みを浮かべながら井上が差し出したものを見て、ライは絶句した。それはライにとって忌まわしい記憶ともいえる代物。
数ヵ月前に生徒会メンバーで行われた猫祭り。その時に過激な衣装を着させられたライを隠し撮りした写真だった。
「いやいや、まさかライにこんな趣味があったなんてねぇ〜」
「ち、違っ!?(ど、どうしてこんな写真があるんだ!?)」
井上の言葉を否定しながらも、ライは助けを求めるように周りを見渡すが、生憎今ラウンジには井上と彼しかいない。しかしこのまま弄られたくないライは少しずつ後退りする。
「あれ、何かあったんですか?」
そこに運がいいのか、悪いのかカレンがラウンジにやってきた。ライが入口の影にいたため彼女はその存在に気付いていないらしく真っ直ぐ井上に向かって歩いていく。
「あっ、ねぇねぇカレン、これ見てよ〜!」
「何ですか…って…井上さん、これどこで!?」
「廊下に落ちてたんだけどね、すごく可愛いでしょ?」
カレンは井上の言葉を聞いておらず、自分の団服のポケットを漁り始めた。しかしお目当ての物が見つからなかったようで、その顔はどんどん青ざめていく。井上はすぐにその狼狽ぶりの理由が持っている写真だと気付いた。
「…もしかして、これカレンの物だった?」
「は、はい…学校行事といいますか…その時の衣装を着たライなんですけど…」
「あら、じゃあ返さなきゃね」
あっさりと写真を返してきた井上をカレンは最初はキョトンと後から戸惑いをこめた眼差しで見つめる。無理もない、あっさりと弄るネタを返すなんて井上らしくない。
「あれ…もうちょっとからかわれると思ったんですけど…」
「どうもあなたの様子はただ事じゃないしね。それに本人がさっきから凄い睨んでるし」
「そうですか…って…えっ…?本…人…?」
「そうよ、ほら入口に立ってるじゃない。あれ、もしかして気付いていなかった?」
カレンが慌てて振り向くと、そこには怒りに肩を震わせているライの姿があった。
「そうか…それはそうだな…君しかあり得ない、持ってたのも…落としたのも…」
体を震わせながらブツブツと呟いているライは端から見れば恐怖の対象でしかなくて。カレンは何も言えずにただ固まってしまう。
「…今日はこれで失礼します」
それだけを聴こえるような声で言うと、ライはラウンジから出ていった。その場には彼を怒らせてしまったと青ざめるカレンとそんな彼女を気まずそうに見つめる井上が残される。
「ど、どうしよう…」
そんなカレンの呟きに答えるものはどこにもいない…