長編 蒼と紅の軌跡

□TURN 07 海上の死闘
1ページ/6ページ

兄は知る…妹の行方を。
彼の生きる目的、それを取り戻すため戦う。
仮面の男…ゼロとして。


『TURN 07 海上の死闘』

ライとカレンはルルーシュに呼び出され、機情の本部にいた。


「ルルーシュ!ナナリーが次の総督って本当なのか!?」
「ああ、スザクが教えてくれた」
「ちょっと待ってよ、スザクが、って…」
「やってくれる、まさかナナリーを利用してまで、俺の記憶が戻ったかどうか確かめるとはな…」


ライはスザクが何をしたのかを察すると、拳を握り締める。


「スザクッ…!ナナリーとルルーシュの絆を利用するなんて…!」
「…それで?新しい総督がナナリー、…戦えるのか、妹と」


同じく監視室に集まっていたC.C.の言葉にルルーシュは何を言ってるといった風に顔を歪めた。


「戦う?ナナリーと?それは何の冗談だ?」
「じゃあ、どうするのよ?まさか、放っておくわけじゃないんでしょう?」
「当然だ。このままでは昔のように、ナナリーがまた政治の道具に」
「歩けず、目も不自由な少女。駒として使い捨てるつもりか…?」


ライの呟きにルルーシュは怒りを晴らすように机に拳を叩きつける。


「そうさせないために俺は行動を起こした!そのための黒の騎士団だ!ナナリーのためのゼロなんだ!」
「それがお前の生きる理由であることは知っている。しかし…」
「俺はナナリーが幸せに過ごせる世界を創る。そのためにもブリタニアを破壊する!!」


C.C.の声を遮り、ルルーシュは感情を吐露し続けた。


「…で?作戦内容はどうするんだ」
「ライ!?」


カレンに首を振りながら、ライはルルーシュに作戦内容を問いかける。


「ああ、まずはこれを見てくれ…」


tttt


「ねぇ、ライ…いいの、ルルーシュを止めなくて?」
「…今のルルーシュは何を言ってもきかない。はっきり言ったところで余計に意固地になるだけだ」


作戦について伝えるために総領事館に戻る道中のカレンの問いにライは首を振った。
ライ個人としては今回の作戦は賛成出来るものではない。
しかしそれをルルーシュに指摘すれば、ろくなことにならないのも理解していた。


「僕達はルルーシュが気付くことに賭けるしかない…僕と違ってまだ間に合うんだから…」


ライはどうしてもルルーシュを自分に重ねてしまう事がある。
だからだろうか、ルルーシュには自分のようになってほしくはない。


「…無理はしないでね」
「ああ、わかってる…」


ライは星が瞬く夜空を眺めながら、一年前にナナリーの言っていた言葉を思い返す。


(ナナリー…君は言ったね、ゼロのやり方は間違ってる、きっと他の方法があるはずだって…)


もしもゼロの願いの根幹にいるのが自分だと知った時にナナリーはどう思うのか?


(ゼロとナナリーのお茶会…皮肉にも既に実現していたなんてな…)


真実を知った時にあの兄妹はどうなってしまうんだろうか?
またあの頃のように穏やかな時間は過ごせるのだろうか?
ライの想いは言葉にならず、宵闇の空へと消えていった…。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ