長編 蒼と紅の軌跡
□TURN 02 砕かれた仮面
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戦場で傷つけ合うなか、1つの真実が白日の元にさらされようとしていた。
その真実が生むのは果たして希望か絶望か……それはまだ誰も知らない。
『TURN 02 砕かれた仮面』
最悪だ……それが黒の騎士団、戦闘隊長であるライの現状に対する率直な感想だった。
「くそっ!なんで、なんで僕はっ!」
ライはモニターに映し出される仲間の悲報に、自分の無力さを思い知らされていく。
――早く、もっと早く。
そう思うライを嘲笑うかのように次々と死んでいく仲間たち……その羅列された戦死者達の中にライは思わぬ名前を見つけて目を見開いた。
「吉田さんと井上さん!?くそっ……!くそぉぉぉぉぉっ!!」
自分とカレンを見守ってくれていた古株の団員の死。
戦場では誰もが死ぬ可能性があるのは当たり前だとわかっていても、思わず慟哭してしまう。
しかし、それでもライは足を止めるわけにはいかない。
「僕は……!」
目の前に現れたサザーランド達を廻転刃刀で両断し、ハンドガンで撃ち抜き、疾風のごとき動きで破壊していく。
ライは今、月下で戦場を駆けていた。
††
【ライが出撃する十数分前】
「……どうなってるんだ」
つい数分前にルルーシュの掛けたギアスの効果が切れたライはラクシャータに連絡した後、状況の把握を行なっていた。
戦いがまだ終わっていない……それはあり得ない事だったから。
「ルルーシュが掛けたギアスは【作戦終了予定時刻まで安静にしていろ】……つまりルルーシュは今の段階で終わらせるつもりだったはず……」
ライが訝しんでいると、指令部となっていたアッシュフォード学園にいる団員から連絡が入る。
ライの混乱をさらに深める連絡が……
『た、大変です戦闘隊長!副司令が撃たれました!』
「扇さんが!?くっ……本当にどうなっているんだ!ゼロは何と言っている!」
『そ、それが……』
団員から語られた事実をライは最初は認識出来なかった。
それだけ聞かされた情報は信じがたいものだったのである。
「行方不明だと!?」
『は、はい!藤堂中佐に指揮を任せ、どこかへ消えたと……』
ライの頭は混乱していて思考が追いついていかない。
この状況での指揮の放棄、とてもではないが正気の沙汰とは思えない行動。
(ルルーシュ、なぜだ?君はなぜ……まさか!?)
しかしゼロの仮面の下を知るライは気付いた、彼が消えた原因は彼女しかないと。
それを確認するため、ライは団員達に指示を飛ばした。
「今すぐこれから言うことを確認しろ!学園内に車椅子の少女がいないか探せ!大至急だ!!」
『は、はい!』
通信機の向こう側から慌ただしい気配が伝わってくる。
ライはルルーシュがなぜアッシュフォード学園を指令部としたのか、その理由に心当たりがついていた。
(きっとナナリーを黒の騎士団に守らせるためにルルーシュは……なら彼が戦場から消えた理由は……!)
信じたくはない、しかしそれしか……ナナリーの身に何かがあったとしかライには考えられなかった。
『い、いません……車椅子の少女なんてどこにも!』
「……わかった」
ライは団員からの答えにそれだけ言うと心に渦巻く感情をぶつけるように壁を殴り付ける。
「ふざけるな、こんな結末があってたまるか……!」
総司令たるルルーシュがいなくなり、扇は負傷、前線にいる藤堂も全軍のカバーはしきれない以上、指揮系統はガタガタなこの戦いにもはや勝機はない。
過去に王として数多くの戦場を戦ってきたライだからこそそれがわかってしまうのだ。
『戦闘隊長、副司令がお話があると!』
「扇さんが?わかった、繋いでくれ!」
既にどれだけの団員を生かせるかに思考を変えていたライは何も聞き逃すまいと通信機を耳に当てる。
そして少し経つと、掠れたような声が聞こえてきた。