長編 蒼と紅の軌跡

□TURN 03 潜伏生活
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ブラックリベリオン……黒の騎士団の総力を上げて挑んだこの戦いは黒の騎士団の敗北、ゼロの死亡という結果を歴史に刻んだ。

だが、【双璧】を始めとする一部の団員は捕まってはおらず、その事に希望を持つ人々も多い。

彼らは雌伏の時を過ごしていた、再び反逆するその日の為に……


『TURN 03 潜伏生活』


【トウキョウ祖界】

ブラックリベリオンから少しの時が経ち……ライはカレン、C.C.と共に暮らしているマンションの階段を昇っていた。

カレンがゼロの正体、行政特区の真実を知ったためショックを受けていると判断したライは事情を知るC.C.と共に潜伏する事を選択。

別の場所に潜伏した卜部や中華連邦に亡命した神楽耶達と連絡を取りながら、日々を過ごしていた。

「少し遅くなってしまったな……」

銀の髪を隠すためにかぶっている帽子を更に目深にかぶり直すとライはため息を吐く。

帰る事は連絡したのだが、アクシデントが重なり予定時間より遅くなってしまったのだ。

「待ってるだろうな、二人共」

ライは二人の反応を想像しながら階段を昇りきると、潜伏先の部屋の前まで行き鍵を差し込んだ。

「ただいま……」

「だったらあんたが作りなさいよ!!」

部屋に入った途端に聞こえてきた怒鳴り声にライは目を丸くする。

内容はどうやら深刻な物ではないようだが……ライは何事か確かめるため、気配を消して耳をすませた。

「ふん、いちいち騒ぐな。私は事実を言ったまでだ、いい加減にカレーは飽きたとな。レパートリーぐらい増やさなければライに愛想を尽かされるぞ?」

「ぐっ……な、何よ、料理なんて出来ない癖に偉そうに……」

「ふっ、知らんのか?私はやれば出来る子だぞ?」

「……ちょっと待って。じゃあ何?あんたはやれば出来る癖に私とライに家事を押し付けてるわけ?」

「……聴こえんな」

「C.C.!あんたって女はぁ!」

その口喧嘩に思わず頭を抱えたくなるライだったが、内容も理解できたので喧嘩を止めるために部屋に歩を進める。

「いい加減にしないか、二人共」

「あっ、えっ、ライ!?」

「遅いぞライ。おかげでまたカレーを食わされるところだった」

驚きに身を固くするカレンに、いつも通りのC.C.……すっかり日常となった正に対称的な二人の反応にライは思わず笑った。

「ただいま二人共。C.C.、ピザの材料を買ってきたから勘弁してくれ」

「ふふっ、流石はライだ。どこぞの女と違って話がわかる」

「それ私の事!?」

「お前とは言っていないが?反応するという事は自覚があるという事だな」

C.C.の言葉にカレンの周りに漂う空気が変わっていく。

そろそろ本気でマズイと判断したライはその怒りを鎮める事にした。

「カレン、そろそろ夕飯にしよう。早く君の料理が食べたい」

「えっ!?う、うん、ライがそう言うなら……」

顔を赤くしてそそくさと台所に向かうカレン。

その様子に首を傾げるライの肩をC.C.が笑いながら叩いた。

「相変わらず見事な手際だな」

「よくわからないが……夕飯の提案をして怒りが治まったのを見るにカレンもお腹が空いていたんだな」

カレンの機嫌がなぜ治ったのかまるでわかっていないライにC.C.はしばし固まり……呆れたように首を振る。

「全くこの天然め……まあいい」

「ところで……僕がいない間のカレンの様子はどうだ?」

「見てわかるだろう?いつも通りだ、よくも悪くもな」

C.C.の口振りに、やはりカレンのあの姿は表向きでしかないと理解した。

最もこの生活を始めた当初、カレンは泣いてばかりの状態だったため空元気を出せるようになっただけまだいいのだろうが……

ライも最初こそゼロの正体や行政特区の虐殺の真相を知った事が理由と考えていたのだが、どうもそれだけとは思えない。

つまり未だにカレンから聞けていない神根島での出来事。

彼女の笑顔がどこか暗いのは、そこに理由があるはずなのだ。

「早く聞き出せばいいものを」

「……話をしようとはしているんだが、逃げられてばかりなんだ」

「いっそのことギアスを使うか?」

C.C.の提案にライはあり得ないと言わんばかりに首を振る。

カレンにギアスを使えるわけがない……ライの表情ははっきりとそう言っていた。

「……僕も手伝ってくる」

ライは話を打ち切るようにそう言うとカレンを手伝うために台所に消える。

「ふむ……まぁいい。今のお前達に乗り越えられん壁ではないだろう……」

C.C.はピザの焼く匂いを鼻で捉えると、少し心を弾ませながらソファーに寝転がったのだった。
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