長編 蒼と紅の軌跡
□TURN 04 復活の魔神
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世界を変えるために作られる大きなパズル。
王、戦乙女、魔女、彼らに足りない最後のピース。
今魔神復活の儀式、その幕は上がる。
『TURN 04 復活の魔神』
【バベルタワー】
エリア11にそびえ立つバベルタワーにある非合法カジノ。
そのワンフロア、隅にあるカウンター席に座りながらライは渦巻く欲望に吐き気を覚えていた。
「これ見よがしにこんなものを建てて……恥の概念すら失ったか、ブリタニアは」
『ここまで酷くなったのは、やはりカラレスが総督になってからだな。お前としては気分が悪いか?』
そう小声で吐き捨てるライにあるはずのない答えが返ってくる。
彼が変装用に着けているカツラに隠れるように耳に着けた小型の通信機からのものだ。
「C.C.、当たり前の事を聴かないでくれ。本音を言えば今すぐにでも逃げ出したいところだ。ここにいると……嫌なことを思い出す」
ライの脳裏に浮かぶのは過去に自分が過ごしていた王宮での事。
ハーフだった事もあり皇族としては価値のない存在として扱われていたライとその妹のアイだったが、容姿端麗な二人に下卑た視線を向けられるのは日常茶飯事で。
ここで給仕をしている日本人のバニーガール達を欲望に濡れた目で見ている光景がそれと重なって仕方がないのだ。
「あそこもここのような薄汚い欲望の坩堝だった……仮面を被って、心にも思っていないお世辞を言い合い、隙あらば喉笛に噛みつこうとする連中。まるで物かのように欲望を隠さない下郎共。昔も今も変わりはしないという事か」
『それを変えるために私達がいるんだろう?』
「そうだな……君の言う通りだ」
C.C.と通信をしていたライは視界に入った紅に頬を緩ませる。
どんな欲望にまみれた世界でもいる可憐な花……ライの視線の先には、彼と同じくバベルタワーに潜入しているカレン。
彼女も他の日本人女性のようにバニーガールの格好をしてバベルタワーの客に給仕をしている。
正直な話彼女にああいった格好をさせる事に抵抗もあるのだが、ライの知らぬ間に決定していたようで気付いた時にはもう止められない状態だった。
『ライ、来たぞ』
そんな事を考えていると、C.C.からとうとう彼が来たという報告が入る。
その言葉にライはニヤリと笑うと立ち上がった。
「じゃあ始めよう、魔神ゼロ復活の儀式を」
『復活させるのは私だがな』
「お客様、どうなされましたか?」
ライが立ち上がった事に気付いたカレンが笑顔で話しかけてくる。
まるで学園での猫被りを彷彿とさせるようなその作られた笑顔にライは思わず笑いそうになるのをこらえた。
「ちょっと案内を頼みたい……チェスが出来る所まで」
「かしこまりました。こちらへどうぞ……」
カレンに案内されライはエレベーターに乗り込む。
そして二人を乗せたエレベーターは上昇を開始した。