長編 蒼と紅の軌跡

□TURN 05 偽りの世界
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彼らにとっての優しい箱庭は、偽りを与えられた鳥籠に変貌していた。偽りの兄弟、偽りの記憶、そして…


『TURN 05 偽りの世界』


―中華連邦総領事館―

「すごい騒ぎね、ルルーシュ」

合衆国日本の二度目の建国宣言。それを別室で聴いていたカレンは部屋に戻って来たゼロにそう言ってすぐに違和感に気付いた。

「…………あなた、ライでしょ」
『っ!?驚いたな。こんなに早く気付かれるなんて…』
「お前の演技が下手なんじゃないか?」

からかうようなC.C.の言葉にゼロ…ライは仮面を外しながら、苦笑する。

「ルルーシュのようにやれと言われてもね…僕も演説したことはあるけど、ルルーシュのは派手な動きが多すぎる」
「おやおや、自分がちゃんと出来ないのをルルーシュのせいにするのか?」
「誰もそんな事…」

自分を無視するかのように話すライとC.C.にカレンの不機嫌指数は上昇していった。

「…………私たちにも内緒ってどういうこと?」

地の底から響くような低い声を発したカレンに、ライは慌てて弁解する。

「す、すまない…だけど情報の漏洩を防ぐためには…「私たち?『私』の間違いじゃないのか?カレン」C.C.…」

そんなライの努力をぶち壊すC.C.は更に言葉を続けた。

「ああ…なるほどな、そんなに自分の男を勝手に使われたのが不愉快だったか」
「なっ!?べ、別にそんなんじゃ…」
「そうか、ならライ私の為にピザを頼…いや、作れ」
「はっ…?なんでそうな「私のライを勝手に使うなぁっ!」カレン!?」
「なんだ、別にライを勝手に使っても構わないんじゃなかったか?…というよりも『私の』なぁ…」

ニヤニヤ笑いながらのC.C.の言葉にカレンは自分の言った言葉を思い返して顔を赤く染める。

「そ、それは…ほらライは黒の騎士団の幹部だし!で、でもライはあなたの召し使いじゃないでしょう!」
「全く、この前までは『私はライを…』と殊勝な態度だったというのに…」
「ち、ちょっと!それはライに言わない約束だったじゃない!?」

アタフタと慌てるカレンと笑いながらからかい続けるC.C.。ライは意外そうな表情でそれを眺めていた。

「二人とも…いつの間にか随分仲良くなってたんだな…」
「んっ?」「えっ?」

ライの呟きに二人は顔を見合わせる。確かに演技だったとはいえ二人は顔を合わせれば喧嘩ばかりしていたのでライが驚くのは無理もないのだが。

「そうね…たしかに今まではこんな感じで話しなんてしなかったし…」

カレンは不思議そうに首を傾げ、でも…と言葉を続ける。

「…うん、私C.C.の事…友達だと思ってるわよ?」
「っ!?」

カレンの一言を受けたC.C.の反応はそれは顕著なものだった。彼女はソファーにあったクッションに顔を埋めると、ライとカレンに背中を向けてしまったのである。

「し、C.C.?どうしたの?」
「何でもない!」

カレンの言葉にもC.C.は素っ気なく返した。カレンは困ったようにライを見る。

(不意打ちだ…っ!わ、私が友達だと!?くっ…今の私の顔を見られてたまるか…っ!)
「ライ…C.C.が…」
「放っておいてあげよう。色々あるんだよ、C.C.にも」

ライはだいたいを察しているのか、カレンの言葉に笑いながら応えた。

(…ライめ…どうやら調子にのっているようだな…)

C.C.は起き上がると、不敵な笑みを浮かべてライに近付いていく。

「そうか…私達は友達か。だったら…」

そして勢いよくライに抱きついた。

「うわっ!?」
「なっ……!?」
「男も共有するとしようか?」

C.C.はニヤニヤ笑いながら抱きつく腕に力を籠めてくる。

「ダ、ダメーーーーーッ!!」

固まっていたカレンは我に返ると、負けじとライに抱きついた。

「ダメ、ダメダメ!絶対にダメェ!いくらC.C.でもライはぜーーーったい渡さない!!」

C.C.のニヤニヤ笑いを見る限り、彼女がからかっているのは一目瞭然なのだが、カレンは冷静じゃなかったし、ライはそれどころではない。

「カ、カレン…落ち着いてくれ!」
「な、何よ…ライは私よりC.C.のほうがいいの…?」

ライが必死に宥めようとするが今のカレンには完全に逆効果だったようだ。ライは慌てて涙を浮かべるカレンに否定しようとする。

「いや、そ「そうだ、ライはお前より、私のほうがいいそうだ」C.C.!カレンを煽るな!」
「ううっ…ライのバカーーーーッ!!」
「僕か!?僕が悪いのか!?」
「戦闘隊長いるか…」

部屋にやって来た卜部が見たものは二人の女に迫られているライの姿だった。

「あっ!卜部さん助け…「取り込み中だったか、すまん」って、卜部さぁぁぁんっ!!」

空気を察した卜部はすぐに出ていき、ライは再び取り残される。

「ライ…ライのバカァ…」

ライは驚く他ない。カレンの態度が今までと全然違うのだ。

(ど、どうなってるんだ!?)
「……わからないという顔をしているな」

C.C.の言葉にライは思わず頷く。

「……カレンは今までお前に負い目を持って、この1年近くを過ごしてきた。その枷が外れた今、こいつは今までのものを取り戻したいのさ」

カレンはC.C.の言葉を肯定するようにライが着ているゼロの衣装をギュッと掴んだ。

(そうか…そういえば潜伏している時、カレンは一切僕に甘えようとはしなかった…どことなく壁を作って遠慮して…ああ…全く僕は恋人失格だな…)

ライは反省すると同時にカレンに対しての想いが膨らみ、カレンの腰に手を回して抱き寄せる。

「…C.C.、離れてくれないか?今はカレンの想いに応えてあげたいんだ」
「……ふむ、いいだろう」

C.C.がやけにあっさりと離れたので、ライは訝しげに眉を潜めた。

「…随分素直に離れたな」
「ふっ、友の言うこともたまには聞かんとな」
「C.C.、君は…」
「ピザ追加で人払いもしておいてやるが、どうする?」

ライは少し考えた後、「頼む」と呟く。

「わかった。なるべく手短にな」

C.C.がそう言って部屋から出た次の瞬間、ライはカレンに引き寄せられていた。

「ライ…今までの分、取り戻していい…?」

ライが頷くとカレンは嬉しそうに目を閉じる。

(僕からするのか…理性が保てるか少し心配だ…)

ライは一抹の不安を抱えながら、約1年ぶりのキスを交わしたのだった……
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