長編 蒼と紅の軌跡
□TURN06 帰って来た者達
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―彼らは1つずつ失ったものを取り戻そうとしている。
そしてはからずも彼らは出会いの原点に立ち返ることになる……
『TURN 06 帰って来た者達』
ギルフォードのグロースターと向かい合いながら、ライは拘束されている扇達を見つめていた。
(皆…やっぱりやつれてる…早く助けないとな)
『ライ、行けるか?』
「ああ、任せてくれ。ここで扇さん達を助け出すことは大きな意味があるからね」
『よし、ギルフォードは任せたぞ』
ゼロは無頼のハッチを閉めると後ろに下がる。
「…行くぞっ!」
ギルフォードがランスを構え、流れるような動きで突撃してきた。
ライは制動刀でそれを受け止め、鍔迫り合いに持ち込む。
「前に比べて、鋭さが増してる…!流石コーネリアの騎士だなっ…!」
刀を放し横薙ぎを放つと、ギルフォードは後ろに下がってそれを回避した。
『質問しよう、ギルフォード卿。正義で倒せない悪がいる時、君はどうする?悪に手を染めてでも悪を倒すか?それとも、己が正義を貫き悪に屈するを良しとするか』
互いに間合いを測る中、ゼロの言葉が響き渡る。
「決闘中に言葉遊びのつもりか、ゼロッ!」
ギルフォードの怒声にも動じず、ゼロは笑って答えた。
『そんなつもりはない。それで?まさか答えられないのか?』
ゼロの挑発にもギルフォードは冷静さを失いはしない。
なぜなら…答えなど決まりきっていたのだから。
「我が正義は……姫様の下にっ!!」
ギルフォードはそう叫ぶと再びランスを構え突撃してくる。
『なるほど、私なら悪をなして巨悪を討つ!!』
―ゼロの言葉と同時に…地面が揺れた。
「なにっ!?これはまさか…ブラックリベリオンの!?」
地面が捲れ上がり、味方機が次々と総領事館内に落ちていく。
落ちないようにスラッシュハーケンを打ち込んだギルフォードは、上から来る機影に遅れて気がついた。
それはナイトポリスが暴徒鎮圧用に持っていたシールドに乗る無頼。
「最初からこれを…ぐうっ!?」
グロースターをジャンプ台代わりにし、無頼は総領事館内に飛び込む。
「全く…相変わらず奇抜な策だ!」
それを追うようにライも飛燕爪牙を打ち込み、総領事館内に飛び込んだ。
「くっ…またしても…!」
それを見たギルフォードは悔しそうに唇を噛むしかできない。
『黒の騎士団よ!!敵は我が領内に落ちた!ブリタニア軍を潰滅し、同胞を救い出せ!!』
「カレン、卜部さん、救助隊の指揮をっ!」
「了解!」
「承知!」
ゼロとライの指示に、カレンと卜部が飛び出した。
「待ってて、皆…!」
カレンはサザーランドを蹴散らしながら、扇達を助けるために駆けていく。
その前に一機のグロースターが立ちはだかった。
「ちっ…卜部さん、扇さん達をお願いします!こいつは私が!」
「了解だ!お前ら、ついてこい!中佐達を救出するぞ!」
卜部が数機の無頼をつれ幹部のもとに向かうのを確認し、カレンはグロースターに対峙する。
「ブリタニア!ここはねぇ、もう日本の領土なんだよっ!」
「紅いナイトメア…お前か!馬鹿め、日本など存在しない!」
「あっ、そう。これだからブリタニア軍はっ!」
カレンは紅蓮を進ませ、グロースターに攻撃を仕掛けた。
グロースターのパイロット…グラストンナイツの1人アルフレッドは、それを避けランスで反撃する。
一方、紅蓮の背後ではアルフレッドと同じグラストンナイツの1人バートが隙を窺っていた。
「ふんっ、馬鹿な奴だ!後ろががら空きなんだよっ!」
バートはランスを構えグロースターを走らせる。
―双璧が片翼を討ち取る為に。
バートが来るのを確認したアルフレッドは紅蓮の動きを止めるため、ランスで突き、その後アサルトライフルを撃った。
「そんな攻撃!」
カレンは特斬刀でランスを受け流し輻射波動を展開、アサルトライフルを防ぐ。
「終わりだ、紅いナイトメアーーーーッ!」
バートがランスを紅蓮に突き立てんとした、その時―
「えぇ、あなた達がね」
カレンは一言、そう呟いた。
勝ちを確信していた2人は忘れていたのだ、『黒の騎士団の双璧』、その二つ名の真の意味を―
―バートは理解できなかっただろう。
いつの間にか自らのグロースターが両断されていたのだから。
―アルフレッドは理解できなかっただろう。
バートのランスで破壊されるはずの紅蓮、その必殺の右腕が自らのグロースターを掴んでいたのだから。
「ば、馬鹿な…」
「君達の敗因は3つ…1つは彼女の背中を取ったこと」
バートのグロースターを一刀両断したライはカレンの背中を取った愚かな選択を嘆き…
「そ、そんな…」
「2つ目は彼の存在を忘れていたこと、…じゃあね」
カレンは傲っていた騎士達を最期の別れを告げる。
「「3つ目は…黒の騎士団の双璧を甘く見ていたこと」」
そして…二人の言葉の後、二機のグロースターは爆砕した。
「…カレン、もし僕が間に合わなかったらどうするつもりだったんだ!?」
カレンがわざと背中を無防備に晒していたことにライは思わず怒鳴るが…
「だって、信じてたから。ライは絶対に私の背中を守ってくれるって」
「っ!?………はぁ、君には敵わない…」
カレンの言葉ですぐに諦める。
「卜部さんがみんなを救出してる。僕たちはゼロの護衛に…なっ!?」
「嘘っ!?」
ゼロを探していた二人の目に飛び込んできたのは、衝撃的な光景。
ゼロの無頼がバベルタワーで戦った敵の新型を庇っていたのだ。
「あれは、ロロか!?」
「な、なんで!?あいつは敵じゃ…」
戸惑いを隠せない中、ライは1つの結論に達する。
「ルルーシュ、君は…(何を話してるかは知らないけど…堕ちたな)」
ロロをこちら側に引き込む最後の一手、ルルーシュはそれを打ったのだと。
きっと今、ルルーシュは甘い言葉をロロに投げかけているのだろう。
「…ふうっ…カレン、僕達も卜部さん達を手伝おう」
「えっ!?ルルーシュを助けなくていいの!?」
カレンの反応は最もだが、既に勝負は決したと確信していたライは首を振った。
「大丈夫だよ、ルルーシュはロロが守ってくれるから」
「ロロって、あの子が?…本当だ…」
ギルフォードの放ったランスからゼロを守ったロロを見たカレンは驚きと共にそれを見つめる。
「そこまでだ、ブリタニアの諸君!これ以上は武力介入とみなす。引き上げたまえ!」
そこに星刻の声が響き、戦いは―終わった。