長編 蒼と紅の軌跡
□TURN 09 再会の朱禁城
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彼らは向かう、新天地へと。
そこで待つのは、予期せぬ再会、そして別れ……。
『TURN 09 再会の朱禁城』
―蓬莱島―
カタカタカタ……
ライとカレンは新たな黒の騎士団の拠点蓬莱島の司令室にいた。
ライは連れてきた100万人の生活を確保するために様々な雑務を行っている。
カレンはそんなライを手伝って書類整理をしていた。
「ねぇ、ライ。ルルーシュはどこに行ったの?」
「新型機のマニュアルを受け取りに行ったよ」
「新型機、ねぇ…」
カレンの顔はあからさまにしかめられる。ルルーシュは今まで乗ってきたナイトメアをことごとく破壊しているので無理もないのだが。
「大丈夫なの?ルルーシュに任せて…」
「大丈夫。新型機…蜃気楼はほとんどが自動制御だから」
見てごらん、とライがノートパソコンに映し出した蜃気楼のデータを見るとカレンはへぇ〜、と驚嘆する。
「絶対守護領域か…確かにこれなら簡単には落とされないわね」
「だろう?そもそもルルーシュは決してナイトメアの操縦技術が低いわけじゃ…」
ない、と言おうとしたライの言葉は、カレンの方へ振り返った瞬間に頭から消え失せた。
カレンは今タンクトップにハーフパンツという出で立ちをして、ノートパソコンのデータを見るために屈んでいる。
つまり…見えてしまっているのだ、豊かな胸の谷間とか、可愛らしいお臍とか、健康的に引き締まった太股だとか、それはもう色々と。
「ふふっ、確かに私達やスザクと比べるのは可哀想…ライ?どうしたの?」
何故か顔を真っ赤にして固まっているライを、カレンは首を傾げて不思議そうに見詰める。
「…っ!い、いや、何でもない!」
フリーズが解けたライは慌てて顔を背けるが、カレンはそれで納得してくれるような相手じゃなかった。
「何でもなくないでしょ。どうしたのよ?」
「いや、だから…」
ライは目を逸らしながらなんとか見ないようにするのだが、それを知ってか知らずかカレンは覗き込むように近付いてくるのでどうしても視界に入ってしまう。
「いや、だから…うわっ!?」
「ライッ!危なっ…」
どうにかして逃れようと後ろに下がったライはバランスを崩してしまった。咄嗟に手を伸ばしライの腕を掴んだカレンも支えきれずに倒れ込む。
「痛つつ…カレン、大丈夫…か…」
「う、うん…大丈…夫…」
目を開いた二人は目の前の状況に言葉を失った。
目の前に相手の顔がある、それも少し動けばキス出来てしまうくらいの近さで。
まるでライの胸にカレンが飛び込んだような体勢で二人は密着していた。
ドキン…ドキン…
その心臓の鼓動はライのものなのか、カレンのものなのか…いや、きっとそれは二人のものだったのだろう。
二人とも現状を認識するにつれ、心臓が早鐘の如く鳴るのを自覚していたから。
「………………」
ライもカレンも沈黙したまましばらく互いを見つめ合っていた。
「あっ…ごめんなさい、すぐに退くから…」
いつまでそうしていただろうか、カレンが顔を真っ赤にしながら起き上がろうとする。
「…カレンッ…」
「きゃっ…」
しかし、ライが抱き締めるように回した腕によってそれは出来なかった。
「ラ、ライ!?何を…」
「カレン…考えていたんだけど…全て終わったら僕と一緒に暮らさないか?」
「えっ?それって…」
「…僕とけ「タバスコ」…何?」
いきなり響いた第三者の声にライが顔を向けるとそこにいたのはピザを片手に唸っているC.C.。
「…いつからそこにいた?」
「そんなことよりタバスコだ。ここにはラー油しかない。どうしよう…」
「僕から言わせればそれこそそんなことだ…って…カレン!?」
「ご、ごめんなさいっ!!」
見られていた事に耐えられなかったのだろう、カレンはライの腕をすり抜けると逃げ出すように出ていってしまった。
「…空気くらい読んでくれないか」
「さて、何のことだ?」
『おい、今顔を真っ赤にしたカレンとすれ違ったんだが……何かあったのか?』
ライがC.C.を睨み付けているなか、書類の束を抱えたゼロが戻ってくる。
しかし、部屋に漂う空気の酷さに無意識に後退りした。
「…何でもないよ」
「おい、ここにタバスコはないのか?」
ライは起き上がってパソコンでの作業を再開し、C.C.はタバスコのない不満をゼロにぶつける。
(なんだなんなんだ!?ライの様子、さっきのカレンの慌てよう、この2つとC.C.がここにいる事を合わせれば何があったか17通りの可能性にまで絞れるが…しかし下手に動けば俺に確実にとばっちりがくる!どうすればいい、どうすれば…!?)
ルルーシュが仮面の中で冷や汗を流しながらこの空気への対策を練っていると、通信音が鳴り響いた。
『ゼロ様、斑鳩に来てください!大変な事が!』
それは、新たなる戦いの序章…。