長編 蒼と紅の軌跡

□TURN 10 引き裂かれた双璧
1ページ/7ページ

黒の騎士団の双璧、それはコンビネーション戦闘において無類の強さを誇る二人の事を指す。
そして今、孤高と双璧がぶつかり合おうとしていた…。


『TURN10 引き裂かれた双璧』


天子を強奪した黒の騎士団が斑鳩で蓬莱島に撤退するなか、ライは迎撃のガンルゥ部隊を蒼月で蹴散らしていた。

「邪魔をするなっ!」

輻射波動砲弾のワイドレンジで次々とガンルゥ達が膨張、爆発していく。
さらに待ち伏せていた黒の騎士団新型KMF『暁』も加わりガンルゥ部隊は壊滅した。

「全軍、そこまで!レーダーに敵影はない、消耗している者からエナジーと弾を補給してくれ」
『それならまずは君が戻るべきじゃない?』
『そうだぞ、司令補佐。お前さんが一番消耗してるはずだ。ここは俺達に任せて戻ってくれ』

暁の中でもエース級に与えられる直参仕様に乗る朝比奈と卜部にライは撤退を勧められる。

「…いや、そんなわけには…」
『大丈夫、大丈夫!ガンルゥぐらいなら僕と卜部で何とかするからさ!』
『お前さんと紅月はいわゆる切り札だ。戦いの最中にエナジー切れなんて洒落にならないだろう?』

畳み掛けるような二人の言葉にライは苦笑しながらついに折れた。

「…わかりました、それではこの場はお願いします」


tttt


ライが蒼月を着艦させると、別動隊を相手にしていたカレンと紅蓮が遅れて着艦する。

「ふうっ…」
「お疲れさま、カレン。君も戻って来たのか」
「うん、千葉中尉と仙波大尉がここは任せて戻れって…」
「ははっ…僕も同じ事を言われたよ」

ドリンクを受け取りながら、束の間の休息に入る二人。

「それにしても…やっぱりパイロットスーツじゃないと暑いわねぇ…無頼に乗ってた頃思い出すわよ…」
「それなら今の内にパイロットスーツに着替えておいた方がいいんじゃないか?いつ出撃になるかわからないんだし」
「そうね…じゃあ、そうさせてもらおうかしら…」

カレンはドリンクを飲み干すと、パイロットスーツに着替えるために更衣室に向かって行く。ライもそれを見送ると天子の様子を見るため格納庫から出ていった。


tttt


ライが天子のいる部屋に向かっていると、前方からゼロが歩いてくる。どうやら疲れているらしく少しフラフラしていた。

「どうしたんだ、天子様を説得するんじゃなかったのか?」
『…どうも理屈で話すタイプではなさそうだからな、神楽耶に任せてきた』
「…神楽耶に任せた?」

ライは神楽耶の事だから説得になってないんじゃないか…という予感がして苦笑する。

『笑い事ではないぞ…このまま天子が事を理解してくれなければ、困ることになる』
「とりあえずフォローは入れとくよ…それじゃあ行ってくる」
『頼む、あと一時間は敵も来ないだろうからな』
「了解」

ライはゼロの肩を叩くと、天子と神楽耶がいる部屋に改めて向かった。


「天子様」
「へっ?」
「黎星刻。将来を言い交わしたお方ですか?」
「え、そんな…ただ、約束を」

ライが部屋の前まで来ると神楽耶と天子の話す声が聞こえてくる。どうやら予想通り完全に説得の体は成していないようだ。

「許婚として?」
「あ、その、外に出たいと、6年前に」
「そんなに昔のことを?運命の人ですね!!」
「そ、そうかしら?」
「素敵ですっ!!」
「はぁっ…素敵ですじゃないよ…」

ライが頭を抱えながら部屋に入ると、顔を赤くして俯いている天子と身を乗り出すようにしている神楽耶がいる。神楽耶はこちらに背中を向けているし、天子は俯いているためにライが来たことに気付いていない。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ