短編

□太陽と月光
1ページ/10ページ

僕には過去の記憶が無い。でもなんとなくわかるんだ。
僕は償いきれないほどの罪を抱えている…。
そんな僕が君の側にいるなんて…本当に許されるのだろうか?
僕は…ここにいていいのかな?


『太陽と月光』


ライは黒の騎士団の格納庫に向かっていた。
自分の愛機月下の整備のためもあるが、そこにカレンがいると扇に聞いたためでもある。

「カレン…喜んでくれるだろうか?」

ライは騎士団制服のポケットに入っている包みを確認しながら呟いた。

ヒュッ……!

その時ライの背中に何かが当たる。

「んっ…?」

ライは後ろを振り返るがそこには誰もいない。足下に落ちていた紙を拾い上げ中を見る。

『このブリタニア人!どうやってゼロに取り入ったか知らないが俺達は絶対にお前を信用しない!』

ライはその文面を見るとため息をつく。

「ハァ…またか」

最近ライはこの手の嫌がらせを受けることが多くなっていた。
新参者で見た目はどう見てもブリタニア人のライが幹部であることに不満を感じているのだろう。

「僕も半分は日本人なんだけどな…」

ライは日本人の貴族の血を半分引いているが、それは幹部のみが知ることだった。
ライは二度目のため息をつくと、その紙をポケットに入れて再び歩き出す。

「とりあえず今は格納庫に行こう。…カレンにまた隠し事をしてしまうな」

ライは嫌がらせを受けていることを誰にも話していなかった。
皆の手を煩わせたくないと考えていたし、何より……

(カレンが聞いたら…きっと悲しむだろうな)

カレンを悲しませたくない―そんな思いからライは黙っていることにしたのである。

(それに向こうの言い分だってもっともなんだ)

ライの出世は、異常とも言えるスピードだった。
ゼロから言わせれば『それだけの働きはしている』らしいのだが……

(でも…僕は日本解放が一番の目的じゃない)

ライにとって一番の目的はカレンが幸せになること。日本解放を疎かにしている訳ではない。
ハーフであるライにとっても日本がこのような状態であることは好ましくないからだ。
しかし、もしもカレンと日本解放が天秤にかけられたら……

(僕は迷わずカレンを選ぶ……)

そんな自分が日本解放を第一に考えている皆に疎まれるのは仕方ないことだとライは思っていた。

―しかしそれはライの勘違いである。
彼らが向けている不信の芽はライの能力への嫉妬から発露したものであり、ライの目的などどうでもいいのだ。

「フウッ……(大丈夫……僕が我慢すればいいだけの話なんだから……)」

ライは最後にまた一つため息をつくと、格納庫に向かう。心に自分でも気づかない小さな傷を作りながら……
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ