短編

□蒼と紅の舞踏
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僕は君の背中を守るために騎士団に入った。そして今……僕は新たな力を手に入れようとしている。
君を守る剣を……。

『蒼と紅の舞踏』

黒の騎士団の戦闘隊長であるライは、アジトに着いた早々ゼロに呼び出されていた。

「今度は一体何なんだ。……どうもゼロは僕を過大評価している気がするんだよな」

ライは騎士団に入団してからナリタ連山の戦いで戦闘隊長の地位を、ベイエリアの戦いでは新型のナイトメア月下を駆って戦ったが、これはどう考えても最近入った団員に対する待遇ではない。

「期待されてるってことなんだろうけど……さすがに行き過ぎじゃないか?(まぁ…この待遇のおかげで常に彼女と一緒に戦えるわけだけど)」

ライはナイトメアの操縦技術と指揮能力に優れているため常にゼロやカレンと共に最前線で戦う。
元々カレンを守るために騎士団に入ったライとしてはその点は感謝しているのだが……。
そんなことを考えながら歩いていると、ゼロの部屋の前まで来ていた。

「ゼロ、僕だ」
『ああ、入ってくれ』

ライが部屋に入ると中にはゼロの他に、ラクシャータの姿もあった。

「ゼロ一体何があったんだ?ラクシャータがいるということはナイトメア関係なのか?」
『そうだ、ライ…お前に新しい専用機を用意する事になった』
「はぁっ!?」

ライは驚きの声をあげた。

「僕に…新しい専用機だって!?」
『そうだ、機体は紅蓮弍式の同型機を予定している』
「紅蓮の同型!?ゼロ、いくらなんでも僕を買い被りすぎだ!大体、この間月下を受け取ったばかりじゃないか!?」
『その月下がもう使い物にならないから言っている!』

珍しく声を荒げたゼロに冷静になったライは尋ねる。

「使い物にならない?どういうことだ」
「坊やがね〜アタシの月下を壊しちゃったのよ」

ラクシャータの言葉にライは訝しげに眉を潜めた。

「僕が……壊した?」
「前回の戦闘で随分と無茶させてくれたからねぇ〜。正確に言えば坊やの操縦が優秀すぎて月下の制御系がイカれちゃったのよ。なんか負けたみたいで悔しいけど」
『修理してもいつまた動かなくなるかわからないらしい……戦闘中にそうなったら作戦にも支障が出ることになる。しかし、無頼ではお前の能力を発揮できない』
「だから騎士団で一番優れている紅蓮の同型になるというわけか」
『そうだ、紅蓮の同型ならばお前の操縦にも対応できるだろう。それに……』

ゼロはライに対して一番効果的な言葉を使う。

『カレンを守るための力としても申し分ないはずだ』
「……ゼロ。僕がカレンの名前を出せばなんでも納得すると思ってないか?」
『違うのか?』
「……完成はいつになる?」

言い返すには心当たりが多すぎるため、眉根を寄せて話を変えるライ。

「機体そのものはほとんど出来てるけど坊やのための調整や色々新しい武器もつける予定だから最低でも一週間はかかるわね〜」
『ラクシャータ、なるべく急がせてくれ』
「わかってるわよ〜」
「じゃあ僕は失礼させてもらう」
「あ、そうだ名前はどうする〜?」
「……名前?」
「新しい機体の名前よ。希望があるならそれをつけてあげるわよ」
「任せ……いや」

任せると言おうとしたライだったが、すぐに考え直す。

(新しい僕の相棒だ。自分で考えるのもいいかもしれない)
「完成までに考えておくよ。じゃあ僕はこれで」

早速いくつかの候補を考えながらライは格納庫へと向かった。
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