短編
□バレンタイン・パニック!
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今日は2月14日、最近では色々と種類も増えたけど乙女の戦いには変わらない日。
「ふあ〜あっ…おはよう、シャーリー…」
「あっ、カレン!今日は頑張ろうね!」
しかし、そんな中…1人の少女は忘れていたのだ。
「頑張ろうねって…何を?」
「えっ?…まさか…忘れてるの?」
「だから、何をよ?」
そして少女は思い出す…今日はどれだけ注意しておくべき日だったのかを。
「今日は…バレンタインデーだよ…?」
「えっ?…あーーーーっ!?」
全てを思い出したカレンの叫びが教室内に響き渡った…。
『バレンタイン・パニック!』
今アッシュフォード学園家庭科室では、カレンがキッチンを右往左往していた。
「えっと、次はチョコを湯煎して…(ああっ、私のバカッ!!何でよりによってこんな大事な日を忘れてんのよ!?)」
カレンがここまで焦っているのは他でもない彼女がチョコを渡したい相手、ライが原因である。
(バレンタインは真っ先にチョコ渡したかったのに…急がなきゃ、ライが誰かのチョコを受け取る前に!!)
いくら恋人同士とはいえ…いや、恋人だからこそカレンは一番にチョコを渡したかったのだ。
生徒会メンバーはカレンが渡すまで待ってくれると言っていたが、ライに好意を抱く生徒は数限りなくいるためそれも気休めに過ぎない。それどころか、ライは男にも狙われているので逆チョコの風習を利用する男達も相手にしなければならないのだ。
「ライッ…待ってて、すぐに作って持っていくから!」
カレンは拳を握り締めると、再び作業を再開した。ライにチョコを一番に渡すために。
tttt
カレンがチョコを急ピッチで作っている頃…ライは逃げていた。
「ライく〜ん!!」
「待って〜!」
「俺の熱い想いを受け取ってくれーーっ!」
「くっ…」
ライはなぜ自分が追いかけられているのか全く理解していない。
今日がどういう日かは聞いていたが、その時はルルーシュは大変そうだな、ぐらいにしか思っていなかったのだ。
「全く…これじゃ、いつまで経ってもカレンに渡せないじゃないか…!」
ライはチラリと手に持っていた紙袋を見ると、窓を開いて中庭に飛び降りる。
「嘘っ!?」
「ここ、三階だぞ!?」
追ってきた生徒達の声を尻目に、ライは中庭に着地すると再び走り出した。
「きりがないな…どこかに隠れよう」
近くにあった空き教室に飛び込むと、鍵をかけて手近な椅子に座り込む。
「ふうっ…」
紙袋を机の上に置いたライは困惑のため息を漏らした。
「それにしても…なんでみんな、僕を追いかけてくるんだっ?」