キリリク文

□共に過ごす優しい世界
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――この世界は前より少しだけ平和になった。
そんな世界で今日も僕は生きていく……君と共に……


『共に過ごす優しい世界』


「お昼のお弁当はこれでよしと……さて、朝ご飯を作ろう」

ライは食パンをトースターにセットしながら冷蔵庫を開け、朝食のメニューを考える。

「ふむ、卵があるな……じゃあ目玉焼きでも作るか…っと、その前に……」

ライはキッチンから愛する人の寝室に向かった。
ドアの前に立ち、無駄だとわかっているが一応ノックをし、呼びかける。

「カレン、起きてるか?もう、朝だぞ」

中から応答はない。しかしいつもの事なのでライは気にせず次の作業を開始した。

「ふうっ…開けるぞ、カレン」

断りを入れてドアを開けると、まっすぐにベッドに向かう。ベッドの上ではライの恋人である紅月カレンが薄手のタンクトップにハーフパンツといった格好で夢の中にいた。

「全く…相変わらず目のやり場に困るな」

ライはなるべく見ないようにしてカレンに近づく。

「それにしても、幸せそうな寝顔だな。一体どんな夢をみているんだか」

カレンの寝顔を微笑ましく見ながらライが呟くと、答えが返ってきた。

「んんっ…ライ…私も好き…」
「なっ!?」

カレンのフレイヤ級の幸せそうな笑顔とセリフにライはのけぞる。


(き、急に何を言い出すんだ!?カレンッ!いや、確かに僕も好きだけど……ん?ちょっと待てよ……カレンは私『も』と言っていた。
つまりカレンは誰かに、『好き』と言われたわけで……僕の名前が出たということは……先に言ったのは僕なのか!?夢とはいえ何を言ってるんだ僕は!)

ライがカレンの寝顔を再び見ると、本当に幸せそうな笑顔で寝ていた。

(僕に『好き』って言われたからこんなに幸せそうなのか?
〜〜〜っ!ダメだ!顔が赤くなるのが止められない……!)

「……君がいけないんだぞ、カレン」

ライは呟くとカレンにそっと触れるだけのキスをする。
しかしその瞬間、気配に気付いたのかカレンが目を覚ました。


「ふぁぁぁ〜〜っ……あれ、ライ?」
「っ……!?カ、カレン、おはよう」

ライはいきなりカレンが目を覚ましたために覆い被さる体勢のまま固まってしまう。

「うん、おはよう。でも、どうしたの?」
「い、いや、君を起こそうと思って来たんだが…」
「あ、もうそんな時間なの…あれ?」
「ど、どうしたんだ?」
「ライ、何か近いんだけど…?」
「しま…っ!」

慌ててライは離れるが時すでに遅かった。

「(そういえば目が覚めてすぐに口元から何かが離れたわね…あの感触はたしか唇…誰の?…ってこの家に今住んでるのは私とライだけじゃない!ということは…!)ライ…あなた今、私に…!」
「ち、違うんだ!カレンッ!いつもは寝顔を見ながら頬や額にしてるんであって、唇にしたのは今回が初めてなんだ!」
「ちょっ…!?『いつもは』って何よ!?」

ライの聞き捨てならない発言にカレンの追求が入る。

「あっ!」

実はライは毎朝カレンの寝顔を時間ギリギリになるまで眺め、頬や額にキスをすることを習慣にしていたのだ。
ユラリ…とカレンがベッドから起き上がって冷や汗をかくライに近付いていく。

「ライ…詳しく聞かせてもらいましょうか…!」
「お、落ち着いてくれ!カレンッ!い、急がないと遅刻する!」
「大丈夫よ…ライのおかげで時間には余裕があるから…!」

…その後、ライは五分ほどカレンに尋問されることになるのだった。
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