キリリク文

□双璧の絆
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どんなに危険だって、やってみせる。ここは僕の…君の大切な居場所なんだから。
だから…僕は…

私は守られるだけなんて、絶対に嫌。じゃあ、あなたは誰が守るのよ…
だから…私は…


『双璧の絆』



『もう良い!全軍撤退しろ!』

黒の騎士団はブリタニア軍との戦いを終え、新たな増援部隊が来る前に撤退しようとしていた。ゼロの言葉を合図に、次々と無頼や装甲車が撤退していく。
そんな中、自動的に殿を務めるのは、騎士団の双璧であるライとカレンの役目だった。

「カレン、紅蓮の調子は?」
「問題ないわ。今日はコーネリアの親衛隊も白兜も出てこなかったから、紅蓮はほとんどダメージを受けてない。エナジーも撤退までなら持つわよ。ライの方はどうなの?」
「僕はサポートに専念してたからね、月下はダメージなんて受けてないし、エナジーもほとんど減ってないよ」

ライの言葉にカレンは安心したように、微笑む。やはりパートナーが無事な事実は嬉しかった…まぁ、この二人の場合それだけではないのだが…

「今日も、お互いに生き残ったわね」
「あぁ…だが、油断は出来ないぞ。戦場ではいつ何が起こるかなんて、わからないんだから」
「ふふっ、アジトに帰るまでが作戦、ってこと?」
「だから、そういうのが油断なんだ」
「はーい、ごめんなさい」
「全く、もう…」

軽口を叩いてはいるが、2人とも周辺の警戒は全く怠っていない。殿がどれだけ重要な役目かは、よくわかっているからだ。

「…今日の戦い、こちらの被害は0だから、作戦そのものは成功と言って良いだろうな。カレンは今日、活躍したと思うし」
「それもあなたのサポートがあるからよ」
「何を言ってるんだ、僕だって君に助けられてるんだぞ。カレンがいてくれなきゃ、僕はとっくにやられてるさ」
「いーや、やっぱりライの方がすごいわよ。あなたのやり方でどれだけ救われたか」
「だから君の方が…」

ビーッ、ビーッ、ビーッ!

「「っ!?」」

ライの言葉は、鳴り響いた警告音に邪魔された。ライはすぐにレーダーを見て、近づいて来る敵機を確認する。

「敵機が一体接近している!このスピード…まさか!?」

ライは今までのデータと比較し、確信を得ると舌打ちした。その情報を紅蓮に送ればカレンの顔も険しくなる。

「くそっ!よりによってこんなタイミングで!」
「嘘でしょ!?何で今になって出てくるのよ!!」
『どうした、ライ、カレンッ!?何があった!』

撤退の先陣にいたゼロからの通信にライは答える、最悪のイレギュラーの来訪を。

「ゼロ、悪い知らせだ。……奴が来た」
『奴だと…?…まさか!?」

ゼロもライの言わんとしてる事を察し、驚愕に満ちた声をあげた。ここに来る予定はそのナイトメアにはないはずだったから無理もない。

「そうだ…白兜だ」


††††


「…いた!黒の騎士団…ゼロ…今日こそ僕の手で終わらせる!」

白兜…ブリタニア軍第七世代KMF、ランスロットのデヴァイサー、枢木スザクは黒の騎士団の追撃を軍から命じられていた。
残念ながら初戦場には間に合わなかったが、まだ完全に黒の騎士団が撤退したわけではない。

「間違った方法で手に入れた結果に価値なんて無いんだ!だから…!」

スザクはランスロットのスピードを更に上げる。黒の騎士団は確実に追いすがられていた…


††††


『くっ、また白兜かっ…!イレギュラーにも程がある!』
「どうします、ゼロ!迎え撃ちますか!?」
『いや、今奴と戦う理由は無い。ライ、カレン、撤退を急げ!』
「それは無理だ」

ゼロの指示をライは一蹴する。このスピードを見る限り、殿の二人に接触してくるのは時間の問題だった。
さらにこのまま追跡を許せば黒の騎士団の本拠地がばれてしまう恐れすらある。誰かが足止めをしなければならないのはあまりにも明白だった。

「この状況では必ず追い付かれる…足止め役が必要だ」
『くっ…仕方がない。ライ、カレンッ!白兜の足止めをするんだ!我々が離脱するまでで構わない!』
「わかりました、ゼロッ!必ず「駄目だ、カレンは撤退しろっ!!」ラ、ライッ!?何言ってんのよ!」

カレンは当然自分も足止めに入るつもりだったが、ライに撤退するように言われて思わず声を荒げる。しかしライは「ダメだ」と繰り返すと、諭すようにカレンを撤退させる理由を告げた。

「紅蓮のエナジーは撤退するだけなら充分な量が残っている。それはつまり…『戦うには足りない』ということだろう?」

ライの淡々と紡がれる言葉にゼロもカレンも押し黙るしかない。それは否定できない事実だったから…

「だけど僕の月下は損傷はしてないし、エナジーもほとんど残っている…足止めは僕一人で行うべきだ」
「だ、だけど…あなた一人を、置いてなんて…!」
「カレン、私情は捨てろ。僕たちは戦争をしてるんだ。…切り捨てる覚悟も必要だ」

ライは暗にこう言っているのだ…自分を切り捨てて生き延びろ、と。しかし、そんなことをカレンが認めるはずがない。

「い、嫌だよ!そ、そんなこと出来るわけ…『わかった、良いだろう』ゼロ…ッ!」

カレンの言葉を遮る形で、ゼロがライの提案を承諾する。

「すまない、こんな選択を『しかし間違っている、間違っているぞ!ライッ!』……何だと?」
『切り捨てるという発想では、ブリタニアと同じだ!それにお前は優秀だからな、失うわけにはいかない。カレンッ!』
「は、はいっ!!」
『お前は一度撤退しろ。紅蓮のエナジーを交換しだい、ライの援護に向かわせる。だから今は…耐えてくれ』
「ゼロ…はい!わかりました!」
「君は…やはり甘い」

ライはため息をつくが、しかし…その顔は笑顔だった。

「わかった…無茶はしないようにする」
「約束よ!破ったら許さないんだからっ!」
「大丈夫、約束は守るよ…僕が死んだら泣いてしまう人もいるしね」
「っ…う、うるさい!」

泣いている事を暗に指摘されたカレンは憎まれ口を叩きながらも紅蓮を撤退させる。

「待ってて…絶対戻ってくる!」
「ああ、持たせてみせるさ…君が戻るまで…」

カレンが撤退するのを確認すると、ライは月下の足を止めランスロットの来る方を睨み付けた。

「来い…白兜っ!!誰もやらせはしない!!」

ライは月下の出力を最大にすると、ランスロットをおびき寄せるため、進路を変える。

「黒の騎士団は…僕の、彼女の居場所なんだ…絶対に守ってみせるっ!!」
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