季節の小説

□モスキート・ウォー〜アッシュフォード学園死闘の記録〜
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「カレン……」
あまりの急展開についていけなかったカレンはライの声に我に返る。
「ライ、聞いて!あれは会長の冗談……「いいんだ、カレン」……はい?」
「君が僕を危険な目に遇わせまいとして、そんなことを言ってくれるのは嬉しい」
「いや、そうじゃなくて「だけど僕は君を守りたいんだ!」……ライ」
「僕は戦うよ。君と……生きていきたいから」
ライのもはやプロポーズと言ってもいい言葉にカレンは顔を真っ赤にし、ミレイはニヤニヤとその光景を眺め、シャーリーは歓声をあげ、スザクは微笑ましそうにその様子を見ていた。
「カレン……それじゃあ……僕は行くよ」
「ライッ……!……気をつけて……(あれ?私達って……何の話してたんだっけ……?)」
先程のライの言葉のせいか、カレンは物事を冷静に考えられなくなっていた。
「ああ……きっと帰って来る……!」
ライは力強く頷くとカレンを抱き寄せ、唇を奪った。
「キャーーーーッ!(か、会長っ!キ、キキキキキスしてますーーー!)」
「これは、これは……(大胆ねぇ……私達がいること忘れてるんじゃない?あの二人……)」
「ライ……カレン……君達はそこまで……僕、感動したよ!」
「それじゃあ……カレン」
ライはカレンから離れる。
「ライッ……!」
その光景は姫を守るため戦いに赴く騎士のようだった……相手は蚊なのだが。
「スザク……待たせたな」
「ライ……後悔は、未練はないのかい?」
「フッ……未練はある、だから未練はない」
「矛盾してるよ……ライ」
「全くだな……さぁ、無駄話はここまでだ……行こう、スザクッ!」
「ああ!ライッ!僕達で終わらせよう……!これ以上の犠牲を出さないためにも!」
「「うおおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!!!」」
勇ましく戦場に向かう二人……だから、相手は蚊なのだが(それも一匹)。
「ライッ……!(病弱設定じゃなければ……!私もライを守るのに……ッ!)」
病弱設定のためライの隣で彼を守れないことがカレンには悔しかった。
そんなカレンの肩をミレイが叩く。
「カレン……あなたは自分は何も出来ないって思ってるかもしれないけど……それは違うわ」
「えっ……?」
「ライはね……あなたのためだからあそこまで戦えるの。あなたの存在そのものが彼の力になってるのよ」
「私の存在がライの力に……」
「そうよ!だからライを信じて待つことが今のあなたの役目!」
ミレイの言葉にカレンは頷くと真っ直ぐにライを見詰める。
「ライ……負けないで!必ず……生きて帰って来てっ!」
正に感動のシーンである……何度も言うが相手は蚊だ(本当に一匹しかいない)。


ミレイは満面の笑顔でシャーリーの横に座る。
「会長……随分煽りましたね〜」
「だってまさか蚊一匹でここまで面白いものが観られるなんて思わないじゃない〜」
「会長が最初にライを煽ったんじゃないですか―!」
「まあね〜、でも……ライがあそこまで心配してくれたのは素直に嬉しかったけどね……」
そう言った時のミレイの顔にふざけた色はなく……本当に嬉しそうだった。
シャーリーもその言葉に頷く。
「そうですね……私もそう思います。ライ、本当に変わりましたよね……」
「ふふっ……これも愛の力なのかしらね〜」
ミレイの表情はもういつもの、ものに戻っていた。
「それで会長はこれからどうなると思います?」
「そうね〜、やっぱり鍵になるのはカレンじゃないかしら?」
先程の雰囲気を微塵も感じさせず、二人は友達の戦いを見守るのだった。


「……くそっ!ここまで素早いなんて……スザク……そっちは!?」
「ごめん……ライッ……!こっちもダメだ!」
ライとスザクは蚊に苦戦していた。
「くっ……!どこだ、どこに行ったんだ!?」
「……っ!!ライッ!あそこだっ!」
「なっ……!?カレンッ!今すぐそこから離れるんだ!!」
「えっ?」
ライは見た。蚊がカレンに止まったその瞬間を―そして……
「っ……!」
「カレンーーーッ!」
ライは急いでカレンに駆け寄る。
「カレン……カレンッ!すまない……!僕は……僕は……!」
「ライ……自分を責めないで……私が油断したのがいけないんだから……」
「だけど……ッ!約束したのに……!君を守るって約束したのに!!」
「ライ……ありがとう……その気持ちだけで私は……満足だから……」
「ッ……!カレンッ!ダメだ!きっと助ける!助けてみせるから!」
……なんかもうこの二人ノリノリである。
ライはともかくカレンは自分が蚊に刺されただけだという事を完全に忘れていた。
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