長編 蒼と紅の軌跡

□TURN 09 再会の朱禁城
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―斑鳩・ブリッジ


『何?政略結婚!?』

斑鳩に呼び集められた幹部達を前に神楽耶の話した内容は黒の騎士団にとって最悪の知らせだった。

「えぇ、皇コンツェルンを通して式の招待状が届いたのですけど、新婦はこの中華連邦の象徴天子様。私を友人として招きたいと」
「そして新郎はブリタニアの第一皇子」
「オデュッセウス・ウ・ブリタニア…(ブリタニア皇位継承権第一位…か)」

ライはオデュッセウスの事を書類上でしか知らない。しかし個人的には一度会ってみたい人物ではあった。

「用意していた計画は間に合いません。まさか、大宦官が」
『いや、違うな。ブリタニアの仕掛けだろう』

そのゼロの言葉にライも頷く。あの大宦官にそれだけの頭があるとは思えないからだ。

「だとしたら俺達は」
『最悪のケースだな(…この手を打たれる前に天子を抑えるつもりだったというのに!まさかこんなに早く、あんな凡庸な男が)』

ゼロや幹部達がこの政略結婚について頭を悩ませていると場違いなほど能天気な声が響く。

「何心配してんだよ!俺達はブリタニアとは関係ないだろう」
「はぁ!?」

声をあげたカレンを筆頭に周りにいる全員がその声の主…玉城をみた。

「国外追放されたんだからさ」
「あの…罪が許されたわけじゃないんですけど」
「それに政略結婚ですし」
「中華連邦が私達を攻撃してくる可能性だって」

新たに斑鳩のオペレーターに補充された三人娘が玉城の発言に指摘を入れる。

「じゃあ何かよ!黒の騎士団は結婚の結納品代わりか!?」
「あら、上手い事言いますね」
「使えない才能に満ち満ちているな」
「暢気こいてる場合か!大ピンチなんだぞ、これは!」

ようやく自分達のおかれた状況に気付いた玉城が騒ぎだすと、周りの目は冷ややかなものから呆れたものになった。

「だからな玉城、それを話してるんだよ、今」
『この話、裏にもう一人いるな。険悪だった中華連邦との関係を一気に、こんな悪魔みたいな手を打ったヤツが』
「第2皇子シュナイゼル・エル・ブリタニア…だろう?」

答えるようにライが呟いた名前にゼロが頷く。

『そうだ、ならばこちらが打つ手は…神楽耶様。私も今回の婚姻の祝賀会にお供しましょう』
「まぁ、ゼロ様自らが?」
『えぇ、相手の出方を伺うためにも…ライ、カレン!君達も私と神楽耶様の護衛として一緒に来てくれ』
「了解」
「はい、わかりました!」
『よし、他の者はついていた任務を引き続き続行!…解散!』

ゼロの言葉に各々が了承しブリッジから去っていった。


tttt


「カレン」
「あっ…」

ブリッジから出たカレンは先に出て待っていたライと鉢合わせる。

「さっきの話だけど…」
「…ここじゃなんだから外で話さない?」
「…わかった」

ライとカレンは甲板に向かって歩いていった。


tttt


「風が気持ちいいわね…」

甲板を歩きながら呟くカレンに対してライは答えずにただ彼女の横顔を見つめている。

「…座らない?」
「そうだな…」

甲板の縁に座ると、しばらく沈黙が続いた。
ライは口を開いたり閉じたりしていたが、一度深呼吸をすると意を決したように話し出す。

「…カレン、改めて言うよ。全て終わったら…二人で一緒に暮らさないか?」
「…それってさ、もしかして…プロポーズ…?」
「ああ…言い方を変えるなら…僕と結婚してくれないか?」
「………」

カレンはライの目から逃れるように俯いてしまった。ライも海に視線をずらしながら目を閉じる。

「何でいきなりそんなこと…」
「言ったはずだよ、この事はずっと前から考えていた…答えを…聞かせてくれないか?」
「私、ライが好き…だからすごく嬉しい」

カレンはライの肩に頭を乗せると手を握った。

「じゃあ…」
「でも、ごめんなさい…すぐには答えられない」

ライが目を開いてカレンを見ると、彼女は肩から頭を離し真剣な顔でライを見つめている。

「今、答えを出したら…ここまで来た覚悟が鈍っちゃいそうだから…中華連邦のゴタゴタが終わるまでは待ってくれない…?」
「いいよ、待ってる。今回の件が終わったら答えを聞かせてくれ」

ライは笑いながら立ち上がると、カレンに手を差し出した。

「ゼロや神楽耶が待ってる、行こう」
「えぇ!」

カレンも笑ってライの腕を掴む。
そして二人は手を繋ぎながら斑鳩内へ戻っていった。
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