短編

□太陽と月光
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格納庫にたどり着いたライは紅蓮の整備をしているカレンを見付けた。
気配に気付いたのかカレンが振り返りライだとわかると笑顔を浮かべる。

「ライ!」

カレンが自分の名前を呼んで笑顔を向けてくれることで、ライは先程までの重い気分が完全に無くなっていた。

「(全く……単純だな僕は)やぁ、カレン」
「どうしたの?月下の整備はもう終わっちゃってるわよ」
「君に会いに来た……って言ったら?」
「なっ!?」

ライの言葉にカレンの顔が真っ赤になる。

「ハハッ、冗談だよ。月下の様子を見に来たんだ。まぁ…さっきの理由もあるけどね」
「も、もうっ!相変わらず恥ずかしいことを言うんだから!」
「ごめんごめん、しかし紅蓮の整備はまだ終わってないのか?いつもはもう終わっているはずなのに」

その言葉にカレンは眉を潜めた。

「誰かが紅蓮の整備をミスしたらしくてね、一からやり直しになっちゃたのよ」
「そうか…なら僕も手伝おう」
「いいの?」
「構わないさ、いつ出撃になるか分からないんだし」
「ありがとう、ライと一緒なら早く終わりそうね」

カレンはそう言いながらライの顔をじっと見つめる。

「ん?どうしたんだ、カレン」
「…ねぇ、何かあったの?」
「えっ!?」
「何となくだけど…最近様子がおかしい気がする」
「な、何でもないさ(バレてたのか!?隠す自信はあったのに…!)」
「本当に…?」

見つめるカレンの瞳からライは顔をそらした。

「…本当に何でもないから」
「…そう、わかった」
「ああ、早く整備を始めよう」

そう言って、背中を向けてしまったライにカレンは心の中で呟く。

(ねぇ、ライ…気付いてないかもしれないけど今のあなた、何か諦めたような目をしてるんだよ?
どうして話してくれないの?私はあなたの力になれないのかな…
悲しいよ、あなたが一人で抱え込むことが、悔しいよ、それを聞けない自分が…)

ライはカレンを悲しませたくないから黙っていたのだが、そのことがカレンを悲しませていることに気付いていなかった。
二人の間にぎこちない空気が流れる。
ライはこの空気を何とかするため何でもいいから話をしようとした。

「カレン、僕は…」

しかしライは最後まで喋ることが出来なかった。
騎士団のトレーラーがいきなり揺れたのだ。

「きゃ!?」
「カレンッ!」

バランスを崩したカレンをライは咄嗟に抱き留める。

「大丈夫か、カレン!?」
「え、えぇ…ありがとうライ」
「ああ、だけど一体何が…?」

二人ともこの異常事態に完全に頭が切り替わっており、更にライの疑問に答えるように声が聞こえてきた。
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