キリリク文

□在りし日の幸せ
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「ほぉ〜…カレンはライにエスコートしてもらいたいんだ〜?」
「あっ…」

カレンがハッと我に返ればミレイはニヤニヤと笑いながら、ナナリーとニーナは微かに頬を染めて彼女を見ている。シャーリーは完全に戻っていなかったらしく状況が飲み込めないと目をパチクリさせていた。

「いや〜、病弱でもやっぱりそこは譲れないのね!いい声してたわよ〜!」
「えっ、あっ、私は…その」
「さてさてライはカレンのすごく強〜い希望で無理だから他に希望ある人はいる〜?」

つい被っていた猫を剥ぎ取ってしまい慌てるカレンを華麗にスルーしてミレイが問いかけるが、なぜか真っ先に手を上げそうなシャーリーが全く反応しない。カレンは気になって椅子に座り直すと小声で話しかけた。

「どうしたの、シャーリー?ルルーシュと一緒にパーティー出たいんじゃないの?」
「よく考えたらルルはナナちゃんのエスコートするに決まってるなぁ…って」
「…それは…えっと」

確かにあの超絶シス…もとい妹想いのルルーシュがナナリー以外の女性をエスコートしようなどと思うはずがないし、他の男に任せるなんて論外だろう。

「あははっ…ナナちゃん相手じゃ私が勝てるわけないし、そもそも勝負したいとも思えないしね…今回は諦めるよ」
「シャーリー…」
「待ってください、シャーリーさん」

口調こそ明るいが落ち込みようは隠せないシャーリーと、そんな彼女になんて声をかけたらいいかわからないカレン。そんな二人に割り込んだのは話にも出ていたナナリーだった。

「シャーリーさんはお兄様にエスコートしてもらってください」
「えっ…でも…いいの?」
「私はスザクさんにエスコートしてもらいますから!」

にっこりと笑うナナリーに感極まったのか、シャーリーが抱きつく。その顔は心底嬉しそうな満面の笑みだった。

「ありがとう、ナナちゃん〜〜!」
「ふふっ、どういたしまして。ミレイさん、そういうことで構いませんか?」
「いいわよ〜!ニーナは私がエスコート役になるつもりだったし、これでペアは決まったわね!」

全てが解決したと皆で笑ったその時、ニーナがおそるおそる手をあげて言った、この瞬間完全にスルーされていた彼の事を。

「あの、ミレイちゃん…リヴァル、は…?」
「……………………あっ」


††††


その頃、パーティーの準備のため倉庫から荷物を運んでいた男性陣は…

「っしゅん!」
「へくしゅ!」
「くしゅん!」
「ふぅあ〜くしゅん!」

次々とくしゃみをしていた。ちなみに上からルルーシュ、スザク、ライ、リヴァルである。

「…風邪でもひいたかな?」
「いやいや、ライ。それは違うぜ!」

荷物を持ち直しながら呟くライにちっちっと口を鳴らすリヴァル。彼が何を言いたいのかわかっているらしいルルーシュは我関せず、わからないスザクとライは頭に?を浮かべた。

「これはあれだね…誰かが俺たちの噂をしているのさ!」
「ああ、確かにそういうよね」
「だけど噂って誰が?」

第一の疑問は解けた二人だったが、誰が噂をしているのかと新たな疑問に首を傾げる。リヴァルは得意そうに笑うと、指を立てて自らの予想を語りだした。

「俺の予想では…生徒会女子の皆様とか」
「ミレイさん達が?」
「つまりリヴァルはこう言いたいのさ。誰が誰をエスコートするか…それが今、女子の間で噂されてるだろう、って」
「おいおい、ルルーシュ!俺のセリフ取るなよ!まぁ、そういうことなんだけどさ…」

自分が話そうとしたのをルルーシュに持っていかれたのが不満なのだろう、リヴァルが口を尖らせる。そんな様子に苦笑しながらライはふと疑問に思ったことをルルーシュに問いかけた。

「ルルーシュでも気にするのか、そうゆうの?」
「俺は別に…エスコートするのはナナリーに決まっているしな。そういうお前こそカレンをエスコートするつもりなんだろう?」
「まぁ、な…僕だってカレン以外の女性をエスコートする気はないが…」
「もったいないよな〜…色んな子から誘いを受けてんのに!」

リヴァルが羨ましそうに肩を竦めていると、今まで何かを考え込んでいたスザクがいいことを思い付いたとばかりにルルーシュとライに笑顔を向ける。

「じゃあ、ルルーシュ。ナナリーは僕がエスコートするよ」
「なにぃ!?…ぐあっ!」

スザクの爆弾発言にルルーシュが目を見張り、その拍子に持っていたダンボールが彼の足の上に落ちた。1箱とはいえ中身の詰まったそれの直撃は相当痛かったらしくルルーシュはうずくまってしまう。

「だ、大丈夫か、ルルーシュ!?」
「あ、ああ…それよりスザク、さっきのは…」
「俺はナイスアイディアだと思うぜ、お兄様?」
「ぐっ…ま、まぁ…スザクなら任せても構わないかもしれない事もないかもしれな…」
「いや、どっちだよ…」

あまりのルルーシュの歯切れの悪さに思わずリヴァルはツッコミを入れ、スザクは心外だと言わんばかりに眉根を寄せた。

「ひどいな〜…僕ってそんなに信用ない?」
「い、いや…俺以外でナナリーを預けられるのはお前かライだけだと思っている。だが、体のこともある!慣れた人間でなければエスコートはムリだ!そうゆう意味でも…」
「はいはい、分かりましたよ!素直に言えばいいのに、妹を渡すのはイヤだ!ってさ。あぁ、なんと麗しき兄妹愛!」
「くっ、茶化すなリヴァル!」

ダンボールを抱え直したルルーシュがリヴァルを睨むなか、スザクは今度は傍観を決め込んでいたライに視線を向ける。

「だったら、エスコートはカレンにしようかな。ライもたまには…」

しかしスザクの言葉は最後まで続かなかった。風切り音とボゴッという音に遮られたのである。

「…………スザク、今何か言ったかな?」

スザクの顔の横にあるのはごく普通のピコピコハンマー。しかしプラスチック製のはずのそれは壁を凹ませ、ポロポロと破片を床に落としていく。

「……ナンデモアリマセン」
「…………ならいい。さぁ、早く行かないとミレイさん達が待ってる」

ライはいつの間にか置いていたダンボールを持ち上げると生徒会室に向かって歩いていく。呆然とそれを見送っていたスザクの肩にルルーシュとリヴァルの手がおかれた。

「スザク、無茶しやがって…」
「…その勇気だけは誉めてやる」
「…………本気で死ぬかと思った…」
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