キリリク文

□共に過ごす優しい世界
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二人はテーブルに向かい合って朝食をとっていた。

「もうっ…!毎朝そんなことしてたなんて思わなかった!」

カレンがトーストをかじりながら責めれば、ライは申し訳なさそうに俯く。

「すまない…」
「そんなに私の寝顔見たり、キスするのが楽しいの?」
「いや、楽しいと言うより…実感するんだ」
「えっ?」
「君が悪夢にうなされず幸せそうに寝ていて、キスされても気付かないくらい無防備な状態でいられる。それだけで僕は幸せなんだと実感するんだ」

そう言って笑うライの顔は幸せそうで、カレンは思わず顔を赤くした。

「〜〜〜っ!相変わらず恥ずかしいセリフをさらっと言うんだから!」
「そうか?」
「そうよ!とにかく今後はああいうことは禁止!」
「いや…君が早く起きれば済む話だと思うんだが…」
「そういう問題じゃないの!」
「うーん…」

ライは思案顔になって考え込んでしまった為、カレンの呟きに気付かない。その内容がこんな内容だった事も。

「大体…キスしたいならしたいって言えば、受け入れるし私からだってするのに…」

「んっ?カレン、今何か言わなかったか?」
「な、何でもない!」
「カレン、顔が真っ赤だぞ!?熱でもあるんじゃ…」
「熱なんてないから!ああっ!もうっ!いいから早くご飯食べなさいよ!」
「君よりは早いと思うんだが…」

端から見れば言い争ってるように見えるが、二人にとってはじゃれあいの一種に過ぎない。

「…あっ、そうだ」
「…どうしたの?」

何かを思い出した様子のライにカレンは首を傾げながら尋ねる。

「朝の日課を忘れていたな」
「えっ!?」
「…………」

ライは椅子から立ち上がるとカレンの背中に回り後ろから抱き締めた。

「ラ、ライ!?」
「カレン………」

カレンの驚く声を無視してライは抱き締める力を強くする。

「もうっ、朝の日課だからっていきなりやらないでよ……」
「すまない」

ライは片手をカレンの頭の上に置き、ゆっくり撫で始めた。

「ううっ…ずるいよ、そんなことされたら何も言えなくなっちゃう……」

最初こそ文句を言っていたカレンだったが、すぐに気持ち良さそうに目を細める。

「…………」

心地よい沈黙が二人を包み込み、静かな時間がながれた。
ライは大切な人の温もりや心臓の鼓動を感じることが出来るこの時間が好きだった。

ライは過去に二度大切な人の温もりや鼓動が失われていく瞬間を経験したことがある。
一度目はライがブリタニアの地方領主だった頃、自らの手で死なせてしまった母と妹の亡骸を抱き締めたとき。
二度目は数ヶ月前、自分によく似た親友達の計画を止められなかったとき。
二回も大切な人を守れなかった自分にこんなことをする資格があるのか。
ライはそう思いながらもカレンを抱き締める腕を離すことは出来なかった。
カレンもそれがわかっているので、ライが満足するまでこうすることにしている。

(まぁ…私も嫌なわけじゃないしね。それにライが甘えてくるなんてこの時ぐらいだし…)
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