キリリク文

□恋人たちのセレナーデ〜新米カップルの試練〜
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「うわっ!?」
「ひゃあ!?」

突然の怒声にライとカレンは慌てて身体を離す。2人の前に現れたのは何故か怒っているルルーシュだった。

「さっきまで喧嘩していたかと思えば、すぐにイチャイチャと!ナナリーの情操教育に悪影響だ!イチャつくなら余所でやれ!」
「さっきまで、って…覗いてたわけ!?(せっかく勇気を出したのに…!許さないわよ、ルルーシュッ!)」
「なっ!?何を言い出すんだ!?」
「そしてよりによって、このタイミングで邪魔をする…悪意すら感じるな…(そんなに死にたいのか?)」
「何故俺が責められなければならない!?間違っているのは俺じゃない、お前達の方だ!(何だ!今の物騒な副音声は!?)」

ルルーシュは叫びながらも徐々に後ずさりしていく。このまま行けば確実にルルーシュは処刑されたのだが、天は彼を見放さなかった。

「お兄様、おはようございます」
「ナナリー!?」
「あら、ライさん、カレンさん、おはようございます」
「ルルーシュ様、ライ様、カレン様、おはようございます」

ナナリーと咲世子の登場によりさっきまでの雰囲気は霧散していく。

「(た、助かった…!)おはよう、ナナリー、咲世子さん」
「ナナリー、咲世子さんおはよう(くっ…!さすがにナナリーの前ではな)」
「えぇ、おはようナナリー、咲世子さん(ルルーシュ、ナナリーに助けられたわね!)」

ルルーシュは安堵を、ライとカレンは悔しさを必死に押し殺して挨拶を返した。

「何かあったんですか?凄く大きな声でしたよ」
「い、いや、何でもないよナナリー…なぁ、ルルーシュ、カレン(言えるわけないだろう!君のお兄さんにキスを邪魔されたから痛め付けようとしてたなんて!)」
「そ、そうだな。ナナリーが気に病むことは何も…」
「そうそう!別に大したことじゃないからね?」

ナナリーの問いかけに三人は平静を装って答える。

「ナナリー様、ちょっとお耳を…」

咲世子がナナリーに何事かを耳打ちすると彼女は驚いた様子で咲世子に顔を向けた。

「ええっ!?そうなんですか、咲世子さん?」
「ええ、恐らく」

ニコニコと微笑みながら咲世子が肯定の言葉を返すとナナリーの顔が真っ赤に染まる。

「あ、あの!ライさん、カレンさん!」
「ナ、ナナリー?」

真剣なナナリーの声色にライとカレンが戸惑っているとナナリーの口から爆弾が投下された。

「ご、ご結婚おめでとうございます!」

「………………」

ものの見事に固まるライ、カレン、そしてルルーシュ。

「け、けけけけけ、結婚!!!?」

一拍遅れて何を言われたか理解した二人は叫びながら顔を真っ赤に染める。

「ナ、ナナリー…いきなり何を…(カレンと結婚か…いやいや、いずれはそうなるとしてもまだ早すぎる!こういうのは順序だててだな…って違う!ああ、もう!頭が混乱してきた!)」
「わ、私達まだ結婚なんて…(でも…ライが旦那様かぁ…えへへ。や、やっぱり子供は多い方がいいかしら?)」

口では否定しているが二人とも顔が緩んで『まんざらでもない』と堂々と顔に書いてあった。

「えっ?違ったんですか?でも咲世子さんが…」
「咲世子さん!ナナリーに変なことを吹き込まないで下さい!」
「いえ、ルルーシュ様。私は昨日見てしまいましたから」
「えっ?」

ライとカレンの動きが止まり咲世子を見つめる。笑みを崩さない咲世子に嫌な予感が止まらないのだ。

「礼拝堂で抱き合うライ様とカレン様「わーーっ!わーーーっ!わーーーーっ!」」

咲世子の言葉を大声を上げて遮った2人は話を始める。しかしそれは誰がどう見ても白々しいものだった。

「カレンッ!そういえば何か用でもあったのか!?」
「えぇ!はい、これお弁当!」
「ああ!ありがとう!じゃあ僕は準備があるから!」
「うん、また後でね!ライ!」

さっさと話を切り上げるとライはクラブハウスに、カレンは校舎に走っていく。

「えーと、お兄様…ライさんとカレンさんはいったい…」
「ナナリー、あの二人は放っておこう」

あまりの急展開についていけなかったナナリーに咲世子が言おうとした事のだいたいを察したルルーシュは、ライもカレンもこれ以上ブルームーン当日の様子を知られるのは好ましくないだろうと精一杯の気遣いをした。

「くすくす…お二人とも、初々しいですね」

咲世子の微笑みにルルーシュは悟る、彼女を絶対に敵に回してはいけないと…



「…ふむ、これは面白くなりそうだ。井上にでも教えてやるとしよう」

そして、その場を全て見ていた魔女がいることに誰も気付かなかった…
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