キリリク文

□双璧の絆
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スザクは真っ直ぐに進んでいた二機のうちの一機が横にそれていくのをランスロットのレーダーで確認した。

「この動き…囮になるつもりか?(ランスロットにぶつけてくるということは…あの赤い奴か青い奴かのどちらかか!)」

このまま真っ直ぐ進めば挟撃の恐れがあるため、ランスロットはそれた反応の方を追う。
しばらく追っていると森の中を突き進んでいた反応が足を止めた。
木々を潜り抜け、スザクがたどり着いたそこは、木々の無い大きな広場のような場所。そしてその中心には…青いKMFが立っていた。


††††


ライは月下を追ってくるランスロットを確認、更にスピードを上げ、引き離しすぎず追い付かれずの距離を保ち、挑発するように月下を走らせる。

「そうだ…追ってこい」

ライは地形データで足止めに適切な場所を探していった。そして木々のない広場のような場所を見つけると、真っ直ぐそこに向かう。

(森に紛れても、あの銃があれば木々を消し飛ばされる。なら、視界が遮られない場所の方がいい。その条件を満たすのは…ここだけか)

月下を広場の中心で止め、ライは深呼吸をする。今まで彼がランスロットと一対一で戦った事はない…なおかつ相手はカレンでも苦戦するような相手。

「カレンがいない僕で…どれだけ奴を足止め出来るか…」

いつも背中を託しているパートナーがいない事に一抹の不安を感じたライの呟きと共に、ランスロットは姿を現した。


††††


「…青い奴か!」
「来たな…白兜!」

月下とランスロットが対峙、互いに戦力としては重要な意味を持つ敵を前に緊張感が高まっていく。

「白兜…黒の騎士団の作戦を、散々邪魔してきたイレギュラー。綿密な計画すらたった一機でひっくり返す最悪の敵…だけどっ!」

「黒の騎士団の青いナイトメア…赤いナイトメアのサポートを完璧にこなし、自身の戦闘力も高い。恐らく、黒の騎士団の中でも一、二を争う厄介な相手…ならばっ!」

「「こいつを落とせば戦況は有利になる!」」

ライは知らない。
白兜のパイロットが大切な人達の一人、スザクであることを。

スザクは知らない。
青いナイトメアのパイロットが、かけがえのない友人、ライであることを。


何も知らないまま、両者は激突しようとしていた。


††††


先に動いたのはランスロット。
ランドスピナーから煙を発しながら月下に接近、MVSを抜いて斬りかかる。

「やはりそう来るか!」

ライは月下を跳躍しMVSを回避すると、あるデータを読み込んだ。

「やっぱりこれじゃ決まらないか…」

ランスロットは狙い撃ちを避けるためにすぐに移動する。しかし、移動した先には月下のハンドガンが撃ち込まれていた。

「何っ!?」

ランスロットはブレイズルミナスを展開し、ハンドガンの弾を弾く。しかしスザクは動きを読まれたかのようなその銃撃に動揺し、すぐに次なる行動をとれない。

「防がれたか!だけど!」

ライもまた一瞬だけ動揺したが、こちらはすぐに次の行動に移った。

一方、気を取り直したスザクは距離を取るために、ランスロットを後ろに跳躍させる。しかし、跳躍した先に、月下が廻転刃刀で突撃してきた。

「やっぱり…動きが読まれてるのか!?」

ランスロットはMVSで廻転刃刀を受け流すと、蹴りを放つ。月下は後方へと下がって、蹴りを回避、牽制のハンドガンを撃つ。
ランスロットはそれを避けると、再び距離を取った。

「やはり一筋縄ではいかない…ここからはこれも使えないな」

ライはモニターに表示されたデータを閉じる。そのデータとは、ランスロットの戦闘パターン。
カレンの戦闘データを素にライとゼロが念入りに調べあげ、見つけ出したデータだった。
ライとしては、このデータが使える内に終わらせたかったのだが…今のところ判明しているパターンはここまで。

「データが使えない以上、動くしかないか…」

ライは改めて操縦幹を強く握ると、月下を最大出力でランスロットに向かわせる。

「この状況で奴が取れる選択肢は3つ。自分も接近してあの剣で応戦するか、距離を取ってスラッシュハーケンを撃ち込むか、そして…」

ランスロットがヴァリスを構えるのを見て、ライは笑った。

「そうだ!その銃で狙い撃つ。それは最善の選択肢だが、僕相手には…最悪の選択だ、白兜っ!」

ライは月下を小刻みに動かし、ヴァリスを全弾回避する。彼の最も得意とする射撃の回避、さらにこの回避方法には、もう1つメリットがあることもライはよく知っていた。

「す、すり抜けてる…?そんなバカなっ!?」

スザクは混乱していた。彼にはまるで、ヴァリスが月下をすり抜けているようにしか見えない。
そしてその混乱は、月下の接近を容易く許してしまった。この相手の動揺を誘うことこそが、先の回避方法、もう1つのメリット。

「しまっ…!」
「まずは…その物騒な銃を破壊させてもらう!」

月下は甲壱型碗でヴァリスを掴み、輻射波動を起動させる。ランスロットは膨張していくヴァリスを破棄、MVSを抜くと横薙ぎを放つが、月下は右腕の廻転刃刀で受け止め、ヴァリスを爆砕すると、その爆煙に紛れて距離を取った。

「くっ…強い…!(やっぱり…殺すしかないのか…!?)」

スザクの中には相手を死なせたくない、という無意識の手加減があったが、それは相手によっては自分を死なせるだけ。

「やらなきゃ…こっちがやられる…!」

スザクは覚悟を決めるとランスロットの出力を上げ、月下に突撃した。

「っ!?スピードが更に上がっただと!?」

月下は飛燕爪牙を放つが、ランスロットはそれを避けると、MVSでワイヤーを切断する。

「なら、これで!」

月下はハンドガンを撃ちつつ接近、ランスロットはブレイズルミナスを展開し、防御した。

「よし!動きが鈍った!」

ライは月下を最大出力で走らせ、一気に距離を詰める。廻転刃刀で突きを放ったその先に…ランスロットはいなかった。

「なっ!?」

ランスロットは突きが入る直前に、スラッシュハーケンを木に打ち込み跳躍していたのだ。
突きを避けたランスロットはスラッシュハーケンを放ち、月下のハンドガンを破壊する。

「くっ!だが!!」

しかし、ライもそのままでは終わらない。スラッシュハーケンが戻る前に廻転刃刀で破壊、そのままランスロットに再び接近した。

「っ!?」

距離を取るだろう、と判断していたスザクは驚愕するが、すぐにMVSで迎え撃つ。月下は振り下ろされるMVSを腕を蹴り上げることで防ぐと、廻転刃刀でランスロットの左腕を切り落とした。

「くうっ…!」

ランスロットは蹴りとスラッシュハーケンで、何とか距離を取る。火花を散らしている左腕部分をパージし、片手のみでMVSを構えた。

「まさかランスロットがここまでやられるなんて…!でも、まだ!」

スザクがランスロットを移動させようとしたその時、通信が入った。
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