シルヴァネル・ソル
□End of Dream
1ページ/5ページ
そして、その日世界は壊れた。
レイヴンに名を与え、禁足地の森にはいってから数日。
マリスは空気がひび割れたような気配を感じていた。
『クロウ』がやたらと飛び交っているのだ。
『クロウ』とは、女神の天敵、黒き翼の大烏と呼ばれている。
しかしその実態は女神と同一の存在。
いや、女神がクロウと同一なのだ。
この閉じられた世界『シルヴァネル・ソル』の外側。
世界樹『タスティエーラ』の力の欠片。
つまるところ、世界の端末が『クロウ』なのだ。
そのクロウを取り込んだ元・人間が女神。
本来の世界では、『魔王』と呼ばれる存在。
それがこの閉鎖世界の神だ。
マリスは知っていた。
500年前に犯した罪の過程で、『クロウ』の欠片をその身の内に取り込んだから。
だが、マリスは『魔王』ではない。
そこまでの力は持たない。
不老ではあるが、不死ではない。
だから、『魔女』
女神の一人、ロゼフィーネの消滅に荷担し、あげく力の一部を奪い取った罪人。
「マリス…?どうしたんだ」
心配そうに近付くレイヴン。
闇夜を照らす焚火の柔らかな光にその輪郭をぼやかして。
(ごめん…ごめんね……)
『クロウ』の欠片を持つからこそ、気が付いた。
今、なぜクロウが集まり出したのかを。