Zill O’ll infinite

□Hollow
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もう一つの真実を見せるという、不思議な鏡。
あたしは、一度だけそれを覗いた事がある。

その鏡の向こう側の世界では、あたしの傍にレムオンはいない。
あたしの知らない場所で、堕ちた王女の人形として顕れた。
ステンドグラスから差し込む光。
煌いたのは、白銀の髪と泥沼のように濁りきった深紅の瞳、そして二本の剣。

その二本の刃をあたしに向けてくる。
あたしは動く事なんて出来ないで、剣を構えたまま凍り付いている。
ふわり、と優雅な仕種で彼があたしにぶつかってきた。

軽い、衝撃。

体に食い込む刃の灼熱の痛み。

そんなものより彼の瞳の絶望は、あたしを灼いた。

微笑むレムオンは、本当に幸せそうで。
それなのに、あたしはこの手に滑るモノを感じていた。
体に力が入らなくて、彼と一緒に互いに寄掛りながら崩れ落ちた。

周りで、誰かが叫んでいるのがわかったけれど答えを返すなんて事、出来やしない。
嘲笑う響きの高い笑い声も、不快に感じても止めようなんて考え付かなかった。

レムオンと視線を合わせようとあたしは顔を上げた。
そこには、変わらず微笑むレムオン。
その薄く形が整った唇が紡いだのは、限りない優しさが満ちた呪文。
彼の剣が引き抜かれたあたしの体は一瞬にして治癒される。

狂喜を孕んだ深紅の瞳。
まるで光が差したかのように微笑んだまま、彼は。


「         」


砂と、化した。
あたしの手をすり抜ける白い砂。
それに埋まる様にあたしの血がこびり付いた彼の双剣と、彼の血のこびり付いたあたしの剣がある。
この手をすり抜けて降り積もるのはかつて彼だったもの。














誰ガ彼ヲ殺シタ?
彼ノ胸ヲ貫イタコノ剣ハ誰ノ物ダ?
知ッテイルハズダ。
ダッテ、コノ剣ハ……!
アノ人ヲ殺シタノハ……!!
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