11/13の日記

22:20
小話 途中です
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負傷した腕の包帯を替えるために彼女はときおり部屋に現れる。右腕を自由に使えないと不便なこともあるから介助はありがたく、顔を見られることに嬉々としているけれど。
「なんだ?」
視線に気づいたカガリは首を傾けて、また一歩。足を進ませる。プシューっと音を立てて彼女の背でドアが閉じる。
狭室に二人きり。
入浴後の心拍に追い打ちをかけるように鼓動はさらに高鳴っている。ドキドキと胸を打つ音。ベッドに座り込み救急用具を広げる彼女の背中からは緊張は感じられない。
いまの状況に悩まされているのが自分だけという事実に今度は胸がきゅうっと締め付けられる。
彼女が平静でいられる理由は聞いた。砂漠のレジスタンスで活動していたときにすっかり見慣れたそうだ。男の体には。
だから、彼女は、上半身を晒している自分が目の前にいても動揺しないし気にならない。 こっちは相変わらずの心拍音と羞恥心を必死で耐えているのに。
「どうした。突っ立ってないでこっちに来いよ」
真横に腰かけてカガリとの距離は20センチ。
もちろん彼女に反応はなく、裸の背中につうっと汗が流れ落ちる。
「しみるか?」
「...え」
「シャワーのお湯。キズにしみるかって」
「あ、あぁ。はじめは痛んだけど、もう...」
慣れた。
口には出さなかったけれど、彼女には伝わったよう。丁寧に消毒ガーゼを宛てほどいた包帯をするすると巻いていく。その手つきが優しい。まるで心のキズをいたわるように。

「よし!これでいいな。きれいにできたぞ」
「......ありがとう」
手元にあった上着を広げようと腕を上げると、彼女が小さく声をもらした。琥珀色の瞳が一点を見入る。 見つめている場所は腹の横側。脇腹にある白い傷痕。
表皮が傷ついたものの浅かったためそんなに目立つ痕ではないのに。なのに、カガリは目を離さない。 5センチほどの小さな傷痕から。
「......これ、消す気はないのか。プラントの技術なら簡単にきれいにできるだろ」
いつも意見をはっきり伝える彼女にしては歯切れの悪い言い方で。
すぐに答えないでいると、カガリはぷいっと急に顔を背けた。








タブレットでかきなぐり。
つづきはまた。

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