貢ぎ物 弐
□蛍火
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(陰間話の一部です。銀時=白尾となってますが、後はそのまま読めるかと)
蛍火
「さぁさぁ、白尾。早く支度をなさいな。あんたが来るのを首を長くしてお待ちだよ」
女将に急かされ、白尾は仕方なさげに支度を始めた。
これ以上渋っても、七つの時から世話になっているこの店の者達に迷惑が掛かるだけだとは、嫌という程解っているのだが、如何せん行きたくないのも本当の所だ。
白尾には、時々馴染みの客からの呼び出しが入る。
宴の席に白尾を呼んで、毛色の違う陰間を肴に酒宴を開くのだ。
珍しくも美しい陰間に、男達は喜び、馴染み客の株も上がる。
勿論、白尾にもそれなりの利益はあって、幕府の一角である馴染み客の連れて来る客人は、それなり以上に上等な客だ。
上手く行けば、白尾に湯水のように金を落としてくれる。
けれど、いくら金になる客になろうとも、白尾は彼らがあまり好きではない。
彼らの瞳は、決して白尾自身を見てはいない。
異国の色とりどりの羽を持つ鳥を、鳥籠にいれたようなつもりで白尾を見る。
それが、嫌いだ。