銀魂短編小説

□酒と涙と男ばかり
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  酒と涙と男ばかり



 土方は珍しくサボらなかった沖田と深夜の巡回をしていた。


 二人が歌舞伎町内でもあまり治安が良いとは言えぬ地域に入った所で、新選組の幹部隊服に身を包んだ土方と沖田の視界に、突如路地からふわりと白いものが舞ったと思うと、それは土方の腕に飛び込んできた。

 受け止めてみればそれは、意思を持ったれっきとした人間だった。


 普段なら、人間を胸で受け止めるような事は有り得ない。仕事柄命を狙われる事は多い。受け止めるた相手が刃でも隠していたら厄介だからだ。

 けれど、その瞬間土方の危機管理能力は著しく低下していた。



 それは、一瞬前に目を引いた色の所為であり、今腕の中にいる人物の所為だった。


「いってぇ」

「坂田・・・?」
「旦那ぁ?」

 その人物は坂田銀時。この歌舞伎町で万事屋なんて胡散臭い商いをしている人物だった。


 脇見をして走っていたらしく、銀時は土方の肩骨にこめかみをぶつけたらしかった。
 土方は多少の衝撃はあったものの、無意識の人間の体当たりで転がるような鍛え方はしていない。



「あれ?多串君に沖田君」

「俺は土方だっつってんだろぉがァァ!何で俺は多串で総悟は沖田君なんだ!!?」

「多串君は放って置いて、旦那ぁ慌ててどうしたんですかィ?」

 土方のツッコミなどさらりと流してしまい、沖田は土方の腕の中から銀時を奪取した。

 土方は小さく舌打ちをしたが、それさえも黙殺された。


「それがさ〜聞いてよ沖田君」

 いつもどんな時でも飄々とした態度を崩さない銀時が、珍しく困り果てたという表情を見せる。
 二人はまた厄介事にでも巻き込まれたのかと密かに眉を寄せ、話を聞く体制をとった。




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