リクワイアに生きる者〜過去編2〜

□西レッド・パルフ編
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 俺が魔法を体得した理由、きっかけ―――語るほどのことでもねぇと思うが、こんな機会だ……たまには昔話も悪くねぇかなと思う。もし聞く時間があるなら、聞いてみるか? 俺の昔話。



シャイニングブレード〜十三の光〜Past story
西レッド・パルフ編



 世界リクワイア。この世界は8つの属性とそれを統括する属性―――合わせ9つの属性の力が均衡を保つことにより平和を維持する世界だ。この世界には様々な星が存在し、それぞれの星で様々な生命が生き生活している。だが、その中の1つの星にある町―――そこにはその平和を乱す集団が、たびたび平穏に暮らそうとしている人々を襲いに来ることがあった。俺はその町―――エットサンの出身だ。
 俺の名前が中途半端にこんな名前なのは親のせいでもあるんだが―――両親の名前をそれぞれ取って名づけられた―――そんな感じだ。生まれて間もない頃は覚えてないのも無理はないが、物心ついた時にはあの集団の奇襲の存在はすっかり認知できるようになった。エットサンという町自体、この星では流通の多い港町ということで行き交う人が多いのもある。あの集団―――グルーミィ軍団の目的は殺戮。奴らはそれによって悦楽を感じ、何度も何度も、町や村が滅ぶまで何度でも襲い掛かってくる。それで失われた村も少なくない。だがエットサンは気候が近くにある洞窟のおかげか割と気温が高い地域で、住んでる住人たちもそれに合わせ体力や運動能力が他の村よりも優れてる人たちがなぜか多い。あいつらの襲撃に遭ったところで壊滅するほどまで至ってないのは、おそらくこのおかげなんじゃないかと俺は思っている。
 そんな俺には幼馴染と弟がいた。常にいつどこで奇襲が来るか分からないこの町で、俺はこの2人だけはいつも大切に思っていた気がする。まだ弟が生まれていなかった頃、俺は幼馴染とよく一緒に遊んだりしたもんだ―――その幼馴染のポライト・パースは昔からしっかりした女で、活発的であるせいか、俺はその元気をいつももらっているようでその元気に押され、いつも押し負けていたような気もするが……まぁそれは突っ込まないお約束にしてもらえるとありがたい。幼馴染を今でも大事に思えるのには理由があって―――そもそも人間が魔法を扱うという能力は基本的に持ち合わせていないらしい。だが今の俺は魔法を扱う能力を持ってる―――それは条件を満たした場合にのみ、人間が魔法を扱うことができるという情報を信じてやり抜いた結果だ。
 俺は弟のホーレーが生まれて間もない頃、あの集団の奇襲に襲われ両親を失った。ホーレーと俺を庇って、親は死んでしまったんだ。俺にとっては今も忘れられない、今でも悔やまれる記憶だ。俺とホーレーはその時幸いにもポライトの家族に引き取ってもらえることになり、2人でその家族と一緒に育った。まぁいろいろあったが、それもいい思い出だ。仲良く一緒に食事したかと思えば喧嘩もしたし、引き取られてしばらくは悲しみからあまり俺は元気がなかったらしいが、それもポライトがいつも励ましてくれた。
「そんな顔したって、レッドのおかあさんおとうさんが帰ってくるわけないんだから、前向いて今を生きればいいじゃない!」
 と――――俺とほぼ同い年だってのにこんなにしっかりしてて、ほんと情けなくなるぜ……。当時は精神的なショックもあったからか、
「そんなの言われなくても分かってるって!」
 とよく反論したもんだが、幼い彼女が今一番励ませる言葉で思いつくのはあのくらいだったんだろうなと思うと、彼女もまた人思いのいい女とも思えるんだよな……。
 そんなこんなで俺は彼女とホーレーと、彼女の家族と一緒に暮らし、たびたびやってくる奴らの奇襲をいつも迎え撃てるようになってきていた。その奇襲の際、彼女は俺にはないある“もの”を持ち、使いこなしてた。
「『ミラクルショット』!」
 俺の後ろで、彼女がそう叫ぶ声が聞こえた。振り向けば彼女は右手に短剣を持ち、その短剣を上空に掲げていた。彼女の立つ地には白色の魔法陣が光り輝いていて、彼女の声に呼応するようにその光が強くなったかと思うと、俺の目の前にいた軍団の奴らを光のカーテンの力で一掃した。その光の力で奴らは倒れ、その場でぴたりと動かなくなったわけだが、それを確認してから俺は再度ポライトのほうへ振り向いた。
「だらしがないわよレッド。敵に背を向けるほど愚かな行為はないと思うわ」
 自信満々に言って見せる彼女の姿は、目の前の幼馴染の男を守ってやったぞ、と言いたげに笑って見せていた。その笑みからはどこか小悪魔的な性格が混じってるようにも見えるんだが、そんなことを言ったらきっと俺は腹パンでもくらいそうなので心の中に留めておくことにした。
「お、俺だって別に背を向けたつもりはねーよ。というか、目の前の奴ら一掃したからって自慢げに言ってんじゃねーよ」
 ほんとは若干“守られた”という自覚があった。だから負け惜しみみたいなもんだ―――こんなこと言って恥ずかしいが、だが言いたくなるから仕方がねえ。
「いいじゃないの別に、事実なんだし。それよりもおしゃべりしてる暇あったら、他に犠牲者出ないように他のおばさんおじさんたち助けに行くわよ!」
 切り替えの早さはさすがと言うべきか―――彼女はいつもこうだ。こんな感じにいつも俺は流れを持っていかれるもんだから、どうも俺は女性を相手にして強く念押しだの流されるだのするといつも押し負けてしまうらしい。ポライトが走っていった方向にもまだ奴らはいるだろうし、殺戮が目的とはいえ、不思議と建物を破壊する奴らが少ないのが本当に幸いしている。へたに壊せばそこにいるとばれたりするからか、奇襲をかけ人を殺すことが快楽となってる奴らにとっては建物を壊すより人を殺すほうが優先的なんだろう。
 この時の俺は体術というか、蹴ったり殴ったりするレベルの技術しか持ってなかった。だからより彼女の放った魔法がすごく羨ましく、俺が蹴ったり殴ったりするよりも格段に強い技術なんじゃないかと思うようになっていた。蹴ったり殴ったりなんて致死に至らせるまでに時間がかかる上、1対1で対面して1人ずつ倒していくような力しかない。俺は彼女を守ろうと思っても今のままじゃ不十分だとこの時感じた。だから俺は決めたんだ、魔法を扱える技術を身に着けようと。ただ、人間が基本的に魔法を扱う技術を持たないのは、魔法なくしてでも様々な知恵を活かして生き抜く方法を見出しているからこそ魔法を扱う能力が基本の中に備わっていないわけで、それを身に着けようとするのだからかなり修行をこなさなければ魔法を扱う能力の習得なんて到底無理だろう。ましてや中途半端な覚悟であれば最悪死の危険だってあるかもしれない。それは人間である者なら親から言い聞かせられるなりして皆知っている常識の知識だ。だが――――。
「俺は……」
 今はこれしかない。だけど次もし奇襲があった時は――――魔法を扱える男になりたい。俺はこの時そう決意し、ポライトの後を追った。
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