ユリレイ現パロ

□ホスト、始めます。
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探偵事務所゙凛々の明星゙。
幼い少年が所長だという事でその筋では割りと有名なこの事務所に、一人の少女がやって来たのは数日前。

「依頼を、お願いしたいのです」

彼女はエステリーゼ・シデス・ヒュラッセインと名乗った。
「えぇと、エステリーゼさん?まさか、ヒュラッセインって…あの?」
メモとペンを片手に持ちながら、若き所長カロルは震える声で問掛けた。
「はい、私はヒュラッセイン財団の血筋の者です」
「ヒュラッセイン財団?何だっけ…」
「知らないのユーリ!?」
カロルを慌てさせた発言をしたのは、彼の横でソファに寄りかかりながら寛ぐユーリと呼ばれた長い黒髪の青年。
「ご、ごめんなさいエステリーゼさん!!」
「いえ、いいんです。それと、私の事はエステルって呼んで下さい」
必死に謝るカロルに微笑むエステル。
「なぁ、だからヒュラッセインって…」
「ヒュラッセイン財団。世界的に有名な医療法人よ。貴方もお世話になった事があるでしょう?ヒュラッセイン総合医療センター」
カロルとユーリの背後から突然現れたのは、青い髪に宝満な胸の美女、ジュディス。
あぁ、と興味無さそうに相槌をうち、ユーリはエステルに目をやる。
「そんで、その財団のお嬢様が一人で来るなんて、一体どんな依頼なんだ?」
真剣に見つめてくるユーリに、エステルも背筋を伸ばし、話し始める。
「はい、実は…とある方の素性調査をお願いしたいのです」
「素性調査?」
カロルはエステルの話を逃さぬ様にペンを動かす。
「ヒュラッセイン財団の理事ヨーデルの秘書が、その…産業スパイなのではないかという話があるのです。だけどヨーデルは彼を深く信頼していて…それに、もし彼が本当にスパイだったら…」
「その秘書が本当にスパイだったら、ヒュラッセイン財団の名折れね」
エステルの言葉に、ジュディスが続く。
「はい…ですから、秘密裏に彼の事を調べたんですが…私一人の調査じゃ何も出てこなくて…」
「何も出なかったならシロなんじゃないの?」
カロルの言葉に、エステルが首を振る。
「ただ一つ、一つだけ…彼と交流があるだろう男性の名前が出てきたんです。依頼は、その男性の素性調査です」
「なるほどな、周りから当たってみろって事か…で、その秘書と男の名前は?」
「あの…秘書の名前は教えられません」
ユーリの問いに答えたエステルの言葉に、カロルが目を丸くした。
「何でさ!」
「相手は理事の直属の秘書。もしその人の名前を出してかぎまわってる事が知れたら、この事務所…ひいてはこの子が危ないわ」
ジュディスの言葉にサァーと顔を青くするカロル。
相手は世界規模の法人団体。こんな小さな事務所など一息に消してしまうだろう。
「ですから、彼と交流があるであろう男性から調べてもらいたいのです!」
「な、何か大事になってきたけど…わ、わかりましたっ!夜空に輝く凛々の明星の名にかけて、その依頼お受けします!!」
「で?エステルさんよ、その男の名はなんて言うんだ?」
「はい、確か…」


シュヴァーン、と。









「シュヴァーン?」
「あぁ、頼むリタ」
薄暗い部屋の中、二人の男女がテーブル越しに向かい合って座っていた。
男は探偵事務所゙凛々の明星゙所員、ユーリ。
リタと呼ばれた女、と言うよりは幼い少女は面倒臭そうに手元の分厚いファイルを捲った。
「シュヴァーン…シュヴァーンねぇ…裏社会の人名名簿にはいないわ」
「リタ特製名簿にもいないとなると…ただの知り合いって線が出てきたな」
頬杖を突き溜め息を吐くユーリを尻目に新たなファイルを取り出し捲っていたリタが、あ。と声を上げた。
「どうしたリタ」
「ねぇ、シュヴァーンって…シュヴァーン・オルトレインかな?」
そう言いながらファイルの開いたページをずいと目の前に出してくる。
「いや、ファミリーネームまでは知らねぇよ…これか」
ページには、確かにシュヴァーン・オルトレインの名があった。しかし…
「これ、警察の名簿じゃねぇか!」
「情報屋たる者、裏社会の情報だけ扱ってるわけじゃないのよ!」
「いつか国家権力総出でお前を消しに来るぞ…」
(それにしても、警察?財団と警察じゃ、確かに接点あってもいいが…このシュヴァーンって奴、たかだか警官止まりじゃねぇか)
「そうそう、このデータによるとこのシュヴァーンってやつなんだけど」
「あぁ」

「十年前に、死んでるの」

「………は?」
「だから、ほらここ!十年前にマフィアとの抗争に巻き込まれて殉職って書いてあるでしょ!?」
リタが指差すところには、確かに十年前に死亡した事が書かれていた。
「じゃあ…俺の探してたシュヴァーンとは別人って事か…?」
「さぁ?…あ、そうだ。あんた財団の秘書の名前教えて貰わなかったのよね?」
新しいファイルをペラペラ捲り、リタが問掛ける。
「あ?あぁ」

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