ユリレイ現パロ

□ホスト、始めます。
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「えーと、あったあった。ヒュラッセイン財団秘書、アレクセイ・ディノイア、四十二歳…深い所まで調べたら、結構黒い噂が絶えないわ、マフィア絡みの噂まであ「まてまてまて!!」…何よ」
依頼人が黙秘した情報をこうもあっさりと言われると、さすがのユーリも焦る。
「あー、その…お前、命は大事にな?」
「わかってるわよ、そうそう…この男調べるなら、うってつけの所があるわ」
ユーリの言葉をあっさりと受け流したリタがファイルの中から取り出したのは、一枚の写真。
「何だこれ…アルト、スク…?」
そこに写っていたのはネオン煌めく街、一件の店、そしてそこに入って行く銀髪の男の姿。
「゙天を射る矢゙、ホストクラブよ。これは今から五年前に撮られた写真」
「これが…アレクセイ?何だって男がホストクラブに…」
「さぁ、そっちの気があるんじゃない?」
あげるわ、と投げられた写真を受け取り、改めて見ると
(ん?)
後ろ姿のアレクセイの影に、深い茶色の髪が見える。長く伸びたそれは、女のものだろうか。
アレクセイは、その゙女゙の肩を抱いていたのだ。
「なぁ、これ本当にホストクラブか?キャバクラの間違いじゃねぇか?」
「ホストクラブよ!」
ちゃんと今だってやってるんだから、自分の目で確かめて来い!と怒鳴り、物まで投げてくるものだからユーリはやむなくリタの部屋から退散した。
隠れ家のようにひっそりと佇む情報屋の建物から出れば、辺りは夜。
(…ホストクラブなら、今が営業時間か)
リタに投げられた物――丸められた紙切れを広げれば、そこには小さく書かれた住所。
「あいつも、素直じゃねぇなぁ」
頭を掻き、歩き出す。
視察ついでに、コンビニで事務所の皆に土産でも買うかと考えながら。











華やかなネオン街。
若い男女が腕を組みながら歩く。
綺麗なドレスの女性から、スーツ姿の男性まで。
まるでパーティでも開かれているのではないかと思う程ににぎやかな街だった。
(ここはカロルにはまだ早いな…さて)
「ねぇ、ちょっと」
(えーと、゙天を射る矢゙、゙天を射る矢゙…)
「ちょっと!」
(……………)
「そこのお姉さんっ!」
ぽん、と肩を掴まれたと同時に言われた一言で、一気にイライラが爆発した。
「はれっ?背がでか…」
「誰がお姉さん…だって…?」
振り向き様に相手を見れば、そこには青筋を立てた無精髭の男がいた。
「ぁ…あはっ、お兄さんだったのね…!」
いや〜ごめんね〜と両手をぱん!と合わせて謝ってくる男に怒りが萎えた。
「あー…まぁ、あんたでいいか。なぁ、ちょっと探してる店あるんだけど」
「ん?何?キャバクラお探し?あっちの゙海凶の爪゙のお嬢ちゃん二人なんてサイコーよ!?店長が変な奴だけど。あ、それとも゙幸福の市場゙!?あそこの眼鏡美人がねー…」
「俺が探してんの、゙天を射る矢゙ってとこなんだけど」

――沈黙。

女性の話で興奮気味の男の顔が、一気に不審者を見る目に変わる。
「おたく、何…そーゆー趣味?」
「ちげーよ!あー、その、えーと」
しまった。言い訳とか何も考えてない。
頭の中をフルスロットルで回転させ、浮かんだ言葉を――きっと後悔するであろう言葉を、口にした。
「お、俺…゙天を射る矢゙でホストしたいんだよ!!」
――嗚呼、何言ってんだ俺。
さっそく後悔してから男を見れば、彼は目を丸くして自分を見ている。
(そーいや、この…おっさん、だよな。こいつは何処の店のやつなんだ?ライバル店のホストなりてぇなんて言われりゃ驚くよな)

たっぷり時間を取って、男が呟く。
「お兄さんって…綺麗な顔してるわよね」
「は?」
マヌケな顔から真顔になり、自分の体を上から下まで舐めるように見つめる男に、今度はこっちがドン引きした。
(え、何だよ…あんな事言っておきながら自分もそーゆー趣味が…)

「うん、合格!!」

またも、はぁ?と声が出た。
「ちょっと無愛想だけど、コミュニケーション能力はあるみたいだし、結構器用そうだし、何よりイケメン!!よし決定!合格だよ青年!!」
何がなんだかわからない。
そんなユーリの心情を知ってか知らずか、男は満面の笑みを浮かべた。
「ようこそ、ホストクラブ゙天を射る矢゙へ!!」
「――はぁ!?」
つまり、これは…
「ね、君は名前何てーの?」
「ユ、ユーリ・ローウェル…」
なんてこった…
「綺麗な名前だねー!源時名もそれでイケるかも!!あ、そうだ自己紹介まだだったね!!」

――すまん、カロル。
(不本意ながら)潜入捜査始めます。

「俺様はここホストクラブ゙天を射る矢゙の雇われ店長、レイヴン様だッ!!」

俺の苦悩も知らずに目の前で馬鹿みたいに笑う男に、思いっきり殴りかかりたい衝動が襲った。

――探偵事務所゙凛々の明星゙所員、ユーリ・ローウェル。
明日から、ホストになります。

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