ギアス短編

□漣が聞こえる 
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暗い部屋の中で、荒い息とくぐもった声が響き、天蓋付きのベッドがぎしりと軋む。
重なった二つの人影から聞こえるのは、布ずれの音と激しい水音。
確かに身体を繋げているけれど、そこに甘い睦言は存在しない。
ただ、膨れ上がった熱の塊を静めるための行為が存在していた。


―お前に協力する。だが、忘れるな、お前はユフィの敵だ。俺は決して許さない。

後ろから深く挿入され、零れそうになる声をルルーシュはぎゅと唇をかみしめることで耐える。
背中越しに感じるぬくもりは、自身の騎士のものである。
耳元に感じる荒い息にすら感じてしまうほど、体は熱を孕んでいる。流れ落ちる汗を、ほとんど乱れのない皇帝服が吸い込む。
それが気持ち悪さをルルーシュにもたらしている。
かすかに肌蹴た服からのぞくのは、白い肌に隠された後孔。
挿入された熱い塊が動くたび、そこから白濁液が流れ落ちる。
これで何度目の行為となるだろうか、ルルーシュには分からなかった。

「うッ…、ふ……」

噛みしめた唇の隙間から、声が漏れる。その瞬間、強くシーツに顔を押し付けられる。

「うるさいよ、黙って」

冷たい声が頭上から聞こえてくる。その間も動きは止まらない。
ルルーシュはきつくシーツを噛みしめた。

―俺とお前は対等じゃない。

胸が痛い。頭を押さえつける手が、辛くて苦しい。
繋がる場所の熱さが悲しい。
この行為に絶望さえしているというのに、火照り続ける己の体が憎くてならない。

―反逆者に協力するんだ。性欲処理ぐらい、協力してもらってもいいだろ?なあ、ルルーシュ

ゼロ・レクイエムを決めた後、スザクはルルーシュに、そう言い放った。
真っすぐルルーシュを見据える暗い翡翠の瞳にあったのは、抑えることの出来ない憎しみだった。
誰よりも大切な人を追い詰めたのは、己に他ならない。
だから、ルルーシュは頷くしかなかった。

決して捨てられなかった大切な想いを胸に押し込め、歯を食いしばる。
湧き上がるぐちゃぐちゃな感情に、ルルーシュは零れ落ちる涙を止められなかった。

どれだけ酷く罵られても、性欲処理のためだけに好き勝手に体を弄られても、嫌いになれなかった。






**




―ロイドさん、相談なんですが

―なになに〜?君がお願いだなんて珍しいこともあるんだね〜

―睡眠薬を作っていただけませんか?無味無臭の物

―ええ〜?何に使うの?

―ルルーシュ、いえ、陛下が最近眠れていないようなので。計画前に倒れられても困りますから

―ふうん、君がそう言うならいいけどさ。あんまり無理しないほうがいいと思うよ〜?







深夜をすぎてなおも、執務室から聞こえるのは書類を捲る音である。

机の上にはまだまだ山積みの書類が残っている。
無言のまま書類にペンを走らせるルルーシュの背をスザクは目を細め、見つめる。

元から細い体だったが、皇帝となってからはますます細くなった。
休めと自分が言えば、逆に追い込んでしまうのは目に見えている。
きっと、大丈夫だと言い切り、机に向い続ける。
スザクは静かに息を吐いた。
それに気付いたのか、ルルーシュが顔を上げることなく言い放つ。

「お前も疲れているだろう?俺のことはいいから、先に休め」

スザクを見つめることなく書類に目を通す姿に、知らず知らず眉間に力が入る。

「いえ、陛下が終えるまで自分はここにいます。自分は陛下の騎士ですから」

そう呟くのと同時に頭を下げれば、深いため息とともに「そうか」と一言だけ返ってくる。
そして広い空間に沈黙が落ちる。
顔を上げたスザクの視線には、すでに書類にむかうルルーシュが映るだけだった。
そのことに苛立つ自分がいることに、スザクは気づいていた。
だが、どうすることも出来ずに立ち尽くすしかない。

しばらくした後。
失礼します、と部屋に入ってきた咲世子についと視線を移す。
ルルーシュの側で紅茶を入れる動作をじっと凝視する。
疲れた顔をしながらも、笑顔を浮かべカップに口をつけたルルーシュを静かに見つめていた。
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