そこは、地の果てでもあり空高く伸びる天の先であり――。 決してたどり着くことの出来ない幻の存在。 世界を司る番人たちの世界を知る者は誰もいない。 そう――此処に存在する者たち以外には――。 延々と続く一本道の迷路と有名な廊下のどこかに存在する過去の番人が住まう場所。 そこに向うには一つの扉を潜らねばならない。 だが、その扉は気まぐれとでもいうか。足でも生えているのか一度とて同じ場所に存在したためしがないという厄介な扉だった。 それもそのはずである。扉は番人の意志一つで自在に動かすことが出来るのだから――。 同じ場所に向かっているはずなのに、人により数分もかからず扉と出会うものもいれば、数刻――いや酷い時は最悪永遠に見つからないという迷惑極まりない代物である。その扉をようやくくぐり抜けたのは翡翠の瞳を持つ青年――枢木スザクだった。 青年は見えた光景に立ちつくした。扉の先にいたのはすべての過去を管理し統括する役目を負う過去の番人に他ならないのだが、視界が真っ青に染まっていたのだ。 「――――は?」 遠くに見える立ち上る入道雲と彼方まで広がる向日葵畑。どこかで見たことのある光景だが、どこで見たものかまるで分らない。いぶかしんでいれば頭上から固いものが落下してきた。転がり落ちた物を手に取ってみればガラスの破片に見えた。けれど、尖った鋭い凶器ではない。まるで川に流され、海に辿りついたか欠片のように固く、けれど丸みを帯びたそれ。照明に翳すと、淡い春の空が見えた。 「何だ、これ……?」 「――それは空の欠片だ」 突然後ろから聞こえてきた声に慌てて振り返ってみればそこにいたのは案の定、無愛想で有名な過去の番人である。相変わらず、シャツと黒のパンツという番人には似つかわしくない出で立ち。他の番人たちはまるで己の力を誇示するかのように派手な装飾で飾り立てている。だが、そんな彼らを遥かに凌ぎ誰より巨大な力を有する彼は自身の装いには全く無頓着である。番人の頂点に立つ王シャルルにすらすべての過去を統括するには一人では不可能だと言わしめるそれをたった一人で遣って退けた極度の変わり者である。 「こんなところで油を売るとは、いい度胸だな。枢木スザク。よほど時の挟間に飛ばされたいらしい」 手に持つ分厚い書籍を肩に担ぎ、鼻で笑う姿が心底腹立たしい。人を見下す態度はどれだけ月日が経とうとも変わらない。 「いやいやいやいや、そんなこと一言も言ってねーし、油も売っちゃいねーよ!つーか、呼び出したのはお前だろうが!」 「――そうだったか?」 ワザとらしく首を傾げる姿に本気で殺意が芽生える。それを持ち前の忍耐力で持ちこたえるが、少々の反論くらい行っても構わないのではないだろうか。そんな想いで口を開く。 「つーか、何だよ、この向日葵畑は!書庫に青空作って何してやがる!」 「今日と言う記念日に一番相応しい記憶だと思ってな」 「――誰のだよ?」 「お前では到底理解できないものだ」 人を馬鹿にした物言いにカチンときて、思わず言い返していた。 「――お前、一回一般教養の授業、受けた方がいいんじゃねーか?」 「―――どういう意味だ」 アメジストの瞳が瞬時に鋭さを増す。放たれる威圧に、ぞくりと背筋が震える。 (――やっべ、まじ怒ってやがる) 齎されるであろう怒りに身構えた時だった。投げて寄こされたのは一通の便箋だった。真っ白なそれに眉を寄せれば、返ってきたのは理解しがたい言葉だった。 「――招待状だ。俺たちも一応、含まれるらしい」 「――――は?」 「何をぐずぐずしている。すぐ、扉を開け る。中の招待状を用意しておけ」 言われるがまま封を開ければ、出てきたのは茶色い手帳――パスポートと呼ばれる代物ではないだろうか。 「――合衆国スザルル……?」 書かれていた文字に首を傾げる。意味が、まったく欠片も理解できない。青年の戸惑いなど余所に、すでに扉を呼び出した番人が振り返り、怪訝な眼差しを送ってくる。 「――おい、何をもたもたしている。さっさと行くぞ」 「勝手に話を進めるな!そもそも俺は最重要事項の確認に同行しろって言われてきただけだ!」 番人は溜息を一つ零すと扉を指差す。 扉の中央に書かれた文字は Code geass Suzaku×Lelouch only event “合衆国スザルル” ゆっくりと開かれる扉に青年は翡翠の瞳を見開いた。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜 ということで、一応彼らもスザルルですから。 ここまで険悪なスザルルもどーよ?と思いつつ東京出発二時間前に描いたものでした。 |