遠く広がる空は繋がっているという。 なら、この想いも届けてくれるだろうか。 愛しいあなたへ。 今でも君を想うだけで、こんなにも胸がいっぱいで。 愛しくて、愛しくて。 今日もまた、あなたを想う。 泣きたくなるほどの“愛”を込めて。 窓から差し込む光に目が覚める。 遠くブリタニアの故郷にきて幾日経ったか。 カーテンを開けた先、今日も青く広がる空が見えて、眩しさに手をかざした。 今日は野外で行われる研究に忙しくなるだろう。 鞄に書類を詰め込みながら目に入ったのは、昨日日本から届いた一通のAIR・MAIL。 宛名は馴染みの日本語。 “枢木スザク” ――、胸が高鳴った。 淡い藤色の便箋にそっと手を伸ばす。 書かれていたのは他愛無い話。 会長やリヴァル、シャーリーたちとのいつもの日常。 仲間の元気な姿が目に浮かんだ。 “僕も皆も元気です。” そうして締めくくられていた手紙に泣きたくなった。 「スザク」 なあ、お前は今でも俺を想ってくれているのか? 逢えない事実に心が軋みを上げる。 もう、忘れてしまったのか? 俺のことなんて。 俺は今でもーー。 こんなにも、こんなにも。 恋しいのに。 逢いたくて、逢いたくて。 泣いた夜はいくつあっただろう。 でも、夢を追いかけると決めたのは俺自身。 だから、返す手紙には元気である自分を書いた。 お前がいなくたって、全然平気なんだって。 毎日充実しているんだって。 本当は――引きとめてほしかったなんて死んでも言わない。 いつもと同じように届くAIR・MAILなのに、たった一つ違っていたことにこんなにも動揺している。 唇から洩れたのは、溜息。 二枚目に織り込まれた白紙の便箋。 すべてをゼロに戻そうとそう言われている気がして怖くなった。 もう、俺のことなんて好きじゃなくなった? 脳裏によぎった瞬間、机に置いたままのチケットを握りしめていた。 携帯を手早く開き、呼び出しコールに耳を澄ませる。 繋がったと同時に休暇を申し出る。 走りながらタクシーを止めるために手を伸ばす。 逢いたい。 君の温もりを感じたい。 恋しい。君が恋しい。 ゼロになんてしたくない。 こんなにも好きなのに。 早く――ただそれだけだった。 一秒でも早く、君に、逢いたい。 左手に光る銀色の光を握りしめ、遠く広がる空に向いただそれだけを想った。 end |