お菓子聖日

□院と僧の関係、最悪
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うーん…気のせいだよね?体育の授業が終わって戻って来た時から一ノ谷院君から視線を感じて仕方ないんだけど、転校して来たばかりだから不安なのかな

1時間近く有る授業の中で感じる視線に首を傾げながらも昼時間を迎え、昼ご飯を食べに食堂へと向かおうとした時だった。クラスの女子から質問攻めを受けて居た筈の一ノ谷院が移動をしようとした玲兎を呼び止める
「芳月君、今日の放課後空いてるかい?良ければ、学校を案内して貰いたいんだけど」
「ぼ…僕で良ければ!じゃぁ…放課後少し待ってて。」
急に呼ばれ驚き思わず声が裏返ってしまった玲兎は恥ずかしそうに教室を出て行く
廊下で鞠亜を見つけた瞬間、潤んだ目で涙を貯めながら飛び付いた。その姿を見た者は迷子になりやっとの思いで飼い主を見つけたワンコに見えたと語る
「まっ、鞠亜ぁぁぁぁあ。」
「ぬあっと!?ど…どうしたの?玲兎」
突然走って来たワンコ…もとい玲兎に驚いた鞠亜は引っ付いて来た玲兎の頭を撫で慰める
「一ノ谷院君が校舎を案内してって頼まれたよ!」
目をランランに輝かせ尻尾を大きく振る犬の姿が其処にあった
引きつった笑いを浮かべながらも、良かったねっと同意する
その勢いは食堂で食事をしている時も止まらなかったのは、鞠亜が驚くほど玲兎が大興奮していたようだ
「じゃ…今日は一緒に帰れない訳か。」
「ふぇっ!一緒に一ノ谷院君と校舎案内してくれないの?」
「いや〜ちょっと、気まずいのが理由に有るからかな。」
目を泳がせ頬を掻く鞠亜の様子にキョトンとしてしまう玲兎
周囲を気にしながら、小さな声で話し出す鞠亜に釣られて身をかがめて話を聞く
「一ノ谷院って四大院の1つでさ、家柄で顔見知りだから気まずいって言うのか微妙な感じなんだよね…」
「四大院って鞠亜が言ってた日本の
経済を担う財閥の一角なんだっけ。なんでそんな凄い人が?」
「こっちが聞きだいわよ。そんな訳で、今日は一緒に帰れないわ」
「むむ…む。」
珍しく眉間にシワを寄せ悩む玲兎に思わず笑ってしまい、重い雰囲気が消えデコピンを額にぶつけ反応を楽しむ鞠亜であった
―――――――――
――――――
―――

時間と言うのは何時の間にか過ぎ、生徒に授業終了の知らせと下校時間を促すかのように機械でセットされたチャイム音が校舎内に響く
ある者は部活動へ。ある者は試験の追試を受けに、ある生徒は転校生の校舎案内へと精を出す時間へと変わる


「お昼に言った通り、私は先に帰るけどお店の方で待ってるから。」
「わかったよ。少し遅くなるって兄ちゃん達にも伝えておいて」
玲兎の伝言を受け取り、帰ろうとした鞠亜を引き留めるかのように言葉を発せられ振り返る
「銀嶺宗の者は四大院に何もせずに帰るんだな。」
「っ!!…えぇ、一ノ谷院とも在ろう方が来るとは知らされていなかったもので。ご無礼を働いたなら謝りますが…場を変えて頂けますか?」
急に雰囲気が変わり冷たい表情をまとった鞠亜と一ノ谷院との一触即発の空気にひたすらオロオロとするばかりの玲兎だが、話は急展開を迎える
「丁度良かった。俺も芳月君の事で聞きだい事がある…場所を変えるか。」
突如、話の話題に出され混乱状態に陥る玲兎をお構い無しに人通りの少ないと思われる屋上へと歩を進める鞠亜と一ノ谷院
もう訳が分からず屋上に連れて行かれた玲兎は抵抗を諦め、舞台へと巻き込まれた

放課後の屋上に上がれば人1人居ない絶好の場所となっており最終下校時間まで充分ある…。緊迫とした空気がピリピリと伝わって来る空間から早くも逃亡したくなって来た玲兎
「―で…何しに来たのよ、寿。アンタが連絡も無しに来るなんて珍しいじゃない」
先程までと口調が変わり、何時もの喋り方へと戻っている鞠亜にやっと安心したのか肩に入っていた力が抜けて行く
「お前が報告を怠るから、この俺がわざわざ転校してまで来たんだ。有り難いと思え、鞠亜」
「ふざけんじゃないわよ。ちゃんと毎月報告してるじゃない!『異常無し』って」
「それが怠って居るって俺は言うんだよ!報告の意味をまるで成してねぇだろうが。」
「知ったこった無いわ。アンタが困ろうが私達には関係無縁なんだから」
突如豹変したかのように口調が崩れて行く2人。二人称も何時の間にか変わっており、親しい関係だと云う事が伝わって来る
「えぇっと…一ノ谷院君と友達なの?鞠亜」
「俺の事は寿で良い、苗字じゃ堅苦しいしな。俺も呼び捨てで呼ばせてもらう」
「友達なんかじゃ無いわよ、こんな奴。後、誰の許可を得て玲兎を呼び捨てにしてんのよ。豆腐の角に頭ぶつければ良いわ」
鞠亜と寿の会話から推測するに…いや、予測する前に空気から伝わる殺気で分かる。
2人はとてつもなく仲が悪いと
それは犬猿の仲を通り越して虎と龍レベルほど仲は最悪のようだ

「話を変える。面倒臭い事は一切無しだ、玲兎は『菓人』なんだろ?」


寿の言葉は玲兎に戦慄を与え、鞠亜に緊迫を迫った




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