首rrrr!!

□白い心‐黒い鍵
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(臨也さんが犯罪者)




今…思えば、あの時に流れた汗は冷や汗だったのか。頭に直接響いた心の臓器の鼓動は

『警告』その物だった

幼く何も知らなかった自分は何故、黒い鍵に手を差し伸べたのだろう。全てが崩壊しパンドラの箱に閉じ込められた、絶望の始まりに


夏の暑く蒸し苦しい昼に鳴いていた油蝉から少しだけ涼しくなる夕方に鳴くヒグラシへと移り変わる逢魔が時、誰も居ない公園にただ1人…ブランコに座り弟の帰りを待つ少年・静雄の姿があった。
生まれ持った異常な力、誰かがソレを『一代での進化』と呼び表現したが…静雄にとっては邪魔で仕方ない存在その物

この力ゆえに、友を作れず唯一の友であり兄弟の幽が自分で待ち合わせ場所に来るのをひたすらに待つ。

夕焼けが赤から青になりかけた空の時間に成っても弟の、幽の姿が一向に見えて来ない。これ以上待てば母を心配させると思い、探しに行こうとブランコから降りた時だった
ブランコのまえに在る手すりに人の姿が突如現れた。静雄が座っていたブランコの丁度、真ん前に居たのだ。思わず声を上げて仕舞いそうになるが失礼にも当たるので堪え走り出そうと歩くと

「君…平和島静雄君だよね?」

針金のように細い足を組み、手すりに座って居た真っ黒でファーが付いたコードを着ている人物に話し掛けられる
其処から発せられた言の葉は知るはずの無い静雄の名前

「なんで、おれの名前」

走り出そうとしていた足を止め振り返る静雄に口の端を吊り上げシニカルに笑う

「君を迎えに来たんだよ、静雄君」

静雄君じゃ堅苦しいからシズちゃんって呼んでも良い?
ニッコリと笑い話し掛けて来た黒い人物はそう言うと近づいて来た

「俺は折原臨也。よろしくね、シズちゃん」

おれは首を傾げた
『シズちゃん(おれ)を迎えに来た』っと云う言葉に。おれは幽を迎えに来て、コイツ…オリハライザヤはおれを迎えに来た。変な話だ

「ねぇ…シズちゃん。君は先程から弟君を待って居るようだけど、まだ来ていないだけなのかな?」

「どういう事?」

赤く、朱を灯した瞳で見つめられドキッンと胸を刺された感触を拭うように首を大きく振り払う
コイツの話を聞いてはいけない、そう本能が示すかのように

「俺が思うに、シズちゃんの力に怯えて逃げちゃったんじゃないの?」

「そんな事無い、幽はおれの側に居てくれた!」

臨也の言葉を拒絶するように強い眼差しを揺るがせない
そんな静雄の反応を楽しむかのようにクスクスと笑う臨也。幼い心の核心を抉るように言葉を紡ぐ

「じゃあ…どうして、弟君は来ないのかな?」

イヤだイヤだ聞きたくない!!
拒否するかのように目を固く閉ざし、耳を塞ぐ静雄

「シズちゃん」

低くそして恐怖心を舐め回すかのように、ねっとりと静雄の名を呼ぶ臨也
ビクリッと体の拒絶反応で強ばらせた時だった…ふわりと優しく柔らかな温かみと安心感を与える人の薫りば鼻孔いっぱいに広がる

「泣かなくても大丈夫だよ。」

臨也に言われて気付く。瞳から溢れ頬を伝わり流れいずる純粋な水滴の存在
脳では否定している感情を心が示しているかのように

「っな、なんで…ふぇ」

拭いても拭いても止めどなく流れる心からの警報、涙
無意識に臨也のコートを掴みシミを広げていく静雄を優しく抱く

「おいで、シズちゃん。俺ならシズちゃんの力も何もかも、愛してあげる」

臨也の言葉は甘い罠。しかし、幼い静雄には優しく愛を与えてくれる存在に思えてきたのか…涙で揺れる瞳で見上げる
あんなにうるさかった蝉の音が心臓の音に掻き消され、思わず腕に力が入り

「それ…本当なのか?おれを、受け入れてくれるの…」

「あぁ。俺はシズちゃんが大好きだからね、愛してあげるよ」

静雄の言葉を聞き、ニッコリと笑い肯定をすれば嬉しそうに溢れる涙を抑え笑う
初めて貰う愛に照れながらも頬擦りをし臨也に抱き付く
その行動は臨也の思惑通りの結果を示した

「嬉しいな…シズちゃん」

恍惚とし狂喜を孕んだ笑みを浮かべ、静雄の紫外線に余り晒れていない細く透き通る四肢を優しく抱き上げ歩き始める
大事な宝物を誰かに見られる前に公園を立ち去りたい気持ちが急かす

「…やっと手に入った。俺の、可愛いシズちゃん。もう離したりしないからね」










白い心は
黒い鍵によって


閉じ込められた。



(もう、離さないから。)






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