陰の道

獣道〈番外編〉R18
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殺せども、幾人殺せども。

我の元には誰も残らず。

何処まで続くか獣道。我只一人さ迷うのみ。

ここは森という名の煉獄か。

嗚呼、それでもやっと見つけたと思うたが――。


「いやあ、あっ…!」
「真帆、…ああ、いいぞぉ!」
「もう…やだ、家に帰してえ…っ、ああっ」
「好きだ、好きだよ真帆…ハアハア」
「ああっん、私は、嫌…い!あんたなんか…大嫌いだ、ケダモノ…っ!」
「な…んだと、真帆」
「ひいっ…!」
「ハァッ…、真帆…また仕置きだな」
「や、やだ…放し…、ひ、いやああああああああ!」


*****


真帆が意識不明となる、ほんの数日前のこと――。

(2年5組…塚本真帆…平成**年12月4日生まれ…母子家庭の一人っ子…か)
「高瀬先生、授業始まりますよ?」
「えっ…、は、はい!」

とある地方都市の、公立高校にて。
チャイムが鳴り、次の授業が始まろうとしていた。
年配の女性教師に声をかけられ、この春赴任したばかりの教師・高瀬陽希(たかせはるき)は慌てて立ち上がり、職員室を後にした。
つい今しがた廊下で騒いでいた生徒達もとうに教室へと戻り、ざわざわという声のみが誰もいない廊下から聞こえてくる。

次は塚本のいる五組だな…。

とある複雑な想いを抱えながら、高瀬は真帆の在籍する教室へと向かう。

『ムカつくんだよてめえ』「!?」

…今の声は、空耳か?

男のものと思われる低い声が、不意に高瀬の耳に入る。生徒の誰かがいるのかと立ち止まり辺りを見回す。が、高瀬以外の人間はおらず。
「ああ、多分また…だな」
驚きはしたものの、然程の恐怖はない。
人に見えぬもの、聞こえぬものを敏感に感じ取る体質の高瀬には、最早慣れっことなっていたのだから。

『アイツ、どうやら俺がわかるみてえだな。だがそれだけの事、どうにもできまい。真帆の事は好きなようにさせてもらうからな…クククッ』
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