長編シリーズ

□覚醒〜The Rouse〜
後編
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「な、なんだお前――」

「……」

ガギィン!

答える事もなくアリスは男に向かって急降下、いつの間にか展開した二振りの剣で襲っていた

「あ、アリス!?
何してるッスか!?」

「戻れ、アリス!」

「……大丈夫」

アリスは小さく返事をすると、男の剣を支点にしてくるりと背中へと回り込む。

「まず――」

ドゴン!

無防備になった背中へと容赦なく蹴りを浴びせる。

バン!

「く、糞……!」

衝撃で瓦礫に吹き飛ばされる。

すぐさま体勢を立て直そうとするが、底には高速で詰め寄ったアリスが立っていた

「……」

ザシュ!

剣――デバイスは非殺傷なのだろう。体を切り上げられても、血はでず真上に吹き飛ばされただけだった。

「がはっ……」

だが、男には充分すぎるダメージだった

「逃がさない……」

すぐさま飛び上がり蹴り飛ばす。

「ぐ……!」

頭にモロにくらい、またもや頭から瓦礫に突っ込む。

「まだ……」

デバイスを腰につけ、太ももから黒と赤の装飾がつけられた二丁の拳銃を取り出す。

「終わってない……!」

ドガガガガガ!

弾丸程度に凝縮された魔力が立て続けに撃ち込まれる。

煙がもうもうと立ち込める


「アリス……。お前……」

「……」


ガラガラッ!


瓦礫が一瞬にして煙と共に吹き飛ばされる。

と、一つの大きな破片がディエチに向かって飛んでくる

「しま……」

「ディエチ姉さん!」

アリスが瞬く間に間に入り、背中に命中する。

ドゴ!

「……っ!」

「アリス!」

軽くよろめき膝をつくが、直ぐに立ち上がり飛んできた原因をみる。

「はっ。調子にのってんな!糞餓鬼がぁ!」

あれほど一方的に攻撃を喰らっていたのに、男には出血はおろかかすり傷一つもない。

「嘘だろ……」

「だが、本気をださせたのは誉めてやる」

そういってもう一振り――計二振りの蛮刀を取り出す。

「さぁ、殺しやる!全力でな!」



ピピピ!




二人が構え、緊張感と殺気が漂っているなか場違いな電子音が鳴り響く。

どうやら男の電子端末のようだ

「…………ちっ!

餓鬼ぃ!てめぇの名前は?」

「……アリス」

「俺の名前はアルク!アルカンシエル!
次あった時、それがてめぇの最後だ!アリス!」

瞬間、いきなり男の姿がかき消える。

「……逃げたッスね」

「それよりもアリスの……」



ドサッ!


「……アリス!」















「ドクター、各々の容態は?」

「まずはチンク。
振動がかなり深く入っていてね。死にはしないが各フレームの全交換が必要だ。
次の戦いには間に合わないだろうね。
でも後遺症も弊害も恐らくないだろう。
――だから、安心したまえ。ノーヴェ。」

「あ、あぁ」

「次にタイプゼロ。
こちらは比較的簡単に調整がすんだ。今は記憶操作にはいっている。

続いて聖王。こちらもショックで気絶していたため、調整が簡単だった。
レリックの移植も終わっている。」

「……アリスは?」

「……怪我は深刻じゃない。
私が手を下すまでも――いや、下す必要がなかった」

「……なに?」

「彼の体には強力な自己再生機能がついていたらしい。
今は疲労と魔力使い過ぎで寝ているだけだ」

「彼が使っていた服とデバイスは?」

「服はどうやらBJのようだね。デバイスは例の箱ごと作動しているみたいだ。
――ウェンディ。彼を見てどう思ってた?」

「少し暗い男の子、だったッスね……
面目ないッス……」

「別に監視の件で叱っている訳じゃない。
というより、気づかないのも無理はない。
何せ彼の体の体構成はまた変化していたのだから」


「……へ?」

「おまけにリンカーコアの形成ときた。
完全にお手上げだよ」

「……ドクターはアリスをどうするの?」

「処分」

「ドクター……。」

「……だけど君達をアルクから救ったのは間違いなく彼だ
意識を乗っ取られている訳でもない。
しばらくは現状維持だね。」

「……しかしどうしてアリスはいきなり現れたんだ?」

「さぁ?
アリスの部屋から魔力の反応があったと思ったらいきなり反応が消失したんだ

それより気になるのはアルクなる男だね
彼は管理局の人間を殺して回って、執拗に聖王の居場所を聞いてらしい」

「殺して、ですか……」

「……次の戦いには恐らくアルクも来るだろうね」

「どう致しますか?」

「決まっているじゃないか

――邪魔するなら潰すだけだよ」
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