その日の夜、あたしの携帯電話から珍しくバッハの無伴奏チェロソナタ第1番が流れた。
あたしは、発信者を確認してから電話に出ると……
《##NAME1##様、お久しぶりです。》
「ホント、久しぶりだね。処で、貴方が連絡して来るって事は情報集まったの?」
≪勿論、ですよ。明日、そちらに向かいます。≫
「分かった、待ってるわ。」
≪しかし、本当によろしいのですね?≫
電話越しの彼は悲しそうな声であたしにそう言って来た。
それに対してあたしは、苦笑いしながら
「迷いなど、もうあの日捨ててきてしまったわ。」
≪分かりました。それでは、明日其方に向かわせ頂きます≫
「ええ、お願いね」
≪それでは、おやすみなさいませ。##NAME1##様≫
「おやすみ、麻生。」
彼が電話を切るのを確認するとあたしは溜まっていた息を吐き出した。
とうとう、明日でこの依頼も終わりを迎える。
それは、同時にあたしを元の生活に戻す合図でもある。
それがなんだか悲しいと言う気持ちがあるのだ。
「何を考えているんだか…最初から決めていたのに」
「」