バッドエンド
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一層激しさを増した戦場の中、あくまでも逃げ続ける一人の男がいた。
「ちょ、マジ勘弁! 待てってオイ。俺弱いから! 倒しても意味ないから! 弱い者イジメはんたーい」
ひらりひらりと身軽な動きで兵士達の攻撃を避けていくハルキ。
「ハルキさん……そこまで見事にかわせるなら普通に戦えばいいじゃないですか」
言葉とは裏腹に余裕の表情で、むしろ相手をからかうような声色のハルキを呆れた顔で見ながらアレックスが言った。
「他人の心配をしている暇があるのか!」
今までアレックスの相手をしていた兵士達が、一瞬のすきを見せた彼に襲いかかる。
「え、あ、うわわっ!?」
体勢を立て直そうとしたところで、運悪く足元に転がっていた小石に足を取られ、バランスを保てず思わず地面に尻餅をついた。
「うっひゃあ!」
恐怖に怯えたいたいけな少年と、手加減もせずに剣を振りかざす男達。何も知らない者からすれば兵士達の方が悪役に見えたのではないだろうか。彼らの怒りは我を忘れさせる程にまで達していたようだ。
「っ!?」
しかし次の瞬間、目を瞑ることさえ忘れていたアレックスの前には複数の兵士達が転がっていた。
「か……頭ぁ〜!」
倒れた兵士達の向こう側から姿を現わしたのは紛れもなくヴィックスだった。軽々と大剣を構えて立っている。
「あー、泣くな泣くな」
思わず飛び付いたアレックスをあやしながらも、新たに攻撃を仕掛けようとしてきた別の兵士にも即座に対応する。
「助かりました……っと、自分も頑張らねばですっ!」
安心しきった表情でその勇姿を見守っているだけだったアレックスも、我に返り再び剣を取った。