終焉之唄

□邪乱無導
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「……愚かなのはお主であろう。それで正義を気取っているつもりか? 正直に申せ。お主もただの狂人じゃ」

 羽夜の指が聖紫の首筋に伸びていく。細い首に爪が食い込み、聖紫は僅かに目を細め苦痛の表情を浮かべた。

「……そう、だな」

 自虐とも取れる溜め息。足りない酸素を補おうと深く息を吸い、羽夜の手を乱暴に引き離した。

「私は死を求める。この不死の肉体から解放される為に。生と死の真髄を知るには多少の犠牲は仕方のないことなのだ」

 うっすらと首筋に残る爪痕をさすり、聞いているのかいないのか、先程少女が顔を出した窓辺に歩み寄る羽夜の後ろ姿を見る。

「ならば、まだこの生き地獄に気付いていない幼子を使えば良い。貴様の飼い犬で一生を終えるより、まだ何も知らぬうちに私が殺してやる。救ってやる」

 羽夜は黙ったまま、窓の外に目をやった。その先に映るのは、無邪気に走り回る子ども達。己の未来を知らぬ幼い命。
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