姫さまを捜せ!
□第1話
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「平和だなぁ……」
新米騎士、シュンは中庭の木陰に座って空を見上げた。
流れる雲、白い鳥、子ども達のはしゃぐ声、これを平和と言わず何と言おうか。
入団生活、慣れたものでもう二ヵ月。
念願叶って幼い頃から憧れていた職に就けたはいいが、毎日の僅かな訓練以外は騎士らしいことを全くと言っていいほどしていない。
今も一応は城内の警備ということになっているのだが、よほど怪しい者でない限り誰もが出入り自由な人目の多いこの城で、何を警備しろというのか。
国の平和を願うのは騎士として当然のことだが、ここまでのどかだと拍子抜けもいいところだ。
これで十余年前は隣国との戦で多くの血が流れていたというのだから信じられない。
「平和だなぁ……」
シュンはあくびをしながらもう一度呟く。
「よっ、シュン! 暇そうだな」
「えっ? あ、ソルさん!」
最大限に緩ませていた顔の筋肉を引き締め、声のした方に向き直った。