姫さまを捜せ!
□第13話
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騎士としての生活にもすっかり慣れ、以前までは手探りで進んでいた複雑な城内の構造も大分理解できるようになっていた。
シュンは迷うことなくメルシィの部屋へと辿り着き、その扉を叩いた。
「姫さま、お花お持ちしました!」
扉越しに声をかけてみるが中から返事は返ってこない。
「あれぇ? おかしいな……」
全く人の気配を感じさせない扉の向こう。なんとなく嫌な予感のしたシュンは勢いよく扉を開けた。
「姫さま!」
開け放たれた窓から吹き込む風。ゆらゆらと揺れる白いカーテン。そして机の上には見覚えのある紙切れが。
「なになに? 『真実の愛に目覚めたので、愛しい人と旅に出ようと思います』……なんか、前にもこんなことあったような……」
誰もいない部屋で、シュンはひとり立ちつくす。
「……っ! 姫さまーーーっ!!!!!!」
我に返ったシュンは紙ごと拳を握りしめて叫んだ。
その声は、穏やかな城内にいつまでもこだましていた。
Fin.