終焉之唄

□狂華朱月
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 人間は、芸術品を造るための材料でしかない。

 真っ赤な色の絵の具で、醜いキャンバスを綺麗に彩ろう。

 朱一色で造り上げられた僕の作品は、とても美しい。




朱月







「愁華」

 華やかな小物が並ぶ手芸屋の奥に、二つの影が並ぶ。
 一人は店主と思われる男。もう一人は至って普通の少女だった。

「ああ、藍紗。買い物かい?」
「依頼だ」
「……ターゲットは?」

 愁華は読んでいた新聞から顔を上げ、藍紗を見つめた。
 買い物途中の少女のような質素な格好をした彼女は、黙って白い封筒を渡す。

「ふぅん、絵描きね」

 慣れたようにその中身を確認すると、素早く懐にしまった。

「しくじるな」

 少し離れた場所で、朱色の糸を物色しているふりをしながら藍紗は小声で言った。

「誰に向かって言ってるんだい」

 愁華はその場から立ち上がると、店頭に並ぶ薔薇の造花を一輪手に取る。

「彼と僕の美的感覚が合うと良いんだけど」
「……それは無理だろうな」

 これから人を殺しに行くというのに楽しそうに笑っている愁華を見て、藍紗はそう呟いて店を出ようとした。

「何も買っていかないのかい? なんなら好きな花をプレゼントするよ」

 藍紗に気付いた愁華は持っていた薔薇を彼女に向けにっこりと笑う。 

「そんな血生臭い花はいらない」
「……残念だな」

 冷たくあしらわれても尚、愁華は愛しげに真っ赤な薔薇を見つめていた。




今宵、月明かりに照らされた、朱い花が咲く──
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