終焉之唄

□儚夢虚散
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 不死の身体を手に入れた人間の願い。

 それは、安らかな、死。




虚散







 魔師。それは日々研究に明け暮れ、人々に新たな技術を与える者のことを指す。古代に忘れ去られた魔術のような奇跡を起こす者として、この名が定着していた。
 だが、毒物や兵器といった人々に害しか与えない技術を専門とした者が多くの割合を占めるため、一般に人々からは嫌煙されている。



「ほれ藍紗、新作だ」

 ベッドから上半身だけを起こし、側にある机の上に小さなガラス瓶を置いたのは、まだ二十歳にも満たない少年だった。ただその口調や態度は、まるで老人のような雰囲気を醸し出していた。

「いつもすまないな、聖紫」

 ベッド横の椅子に腰掛けた藍紗は瓶を受け取る。橙色の光を放つ簡易照明に照らされたその中には、少量の無色の液体が揺れていた。

「それは私の台詞だ。お前さんが買ってくれねば私は生活できんよ」

 聖紫は机に肘を乗せ、藍紗と目線を合わせて笑った。その姿だけを見ればまだ幼い少年が無邪気な笑顔を浮かべている、誰もがそう思うだろう。

「比較的に揮発性の高い毒だ。充分気を付けて扱うんだぞ」

 直後に目を細めて忠告する聖紫。薄暗い部屋、そこに少年の姿はどこにも見えなくなっていた。




 遠い昔に夢見た身体。代償に得た苦痛と虚しさ。希望は彼方に消え失せた。遥か昔の、夢の跡――
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